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宇都宮市大寛町のうえの医院 上野 裕院長のコラムです。
県立宇都宮高校、北海道大学医学部卒業後、慶應義塾大学大学院で医学博士号を取得。国立栃木病院、横浜けいゆう病院、芳賀赤十字病院産婦人科部長を経て、1985年からうえの医院に勤務。
http://www.uenoiin.net

知っているようで意外と知らないピルの種類と利用法


Vol.53
知っているようで意外と知らないピルの種類と利用法
正しい知識を持って正しく使うことが大切です

 家族計画のため、また不幸な命を増やさないためにも避妊は大切ですね。でも、避妊は男性だけが行うものだと思っていませんか? 妊娠したとき、体に負担がかかるのは女性です。ピルについて知っておきましょう。宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんにピルの基礎知識を教えてもらいました。

 ピルとは、卵胞ホルモン(E)と黄体ホルモン(P)の人工合成薬のことで、服用すると、㈰排卵は抑制され、㈪子宮内膜は肥厚します。元々の役割は㈰を利用しての避妊効果です。含まれるPによって、ピルは2種に分けられます。

■2種・2タイプに分けられます
【第1世代】ノルエチステロンという効果の弱いPが使用され、それを補うためにEの容量が高めでした。しかし、Eの副作用と推定される血栓形成・乳がん・子宮頚がんの発生が増加したため、Eを50マイクログラム程度に減らす試みがなされました。Eが50マイクログラムのものを中容量ピル、それ未満の薬剤が低容量ピルと呼ばれます。
【第2世代】Pはノボルノゲストルを使用していますが、ニキビ・多毛症・肥満・気分の落ち込み・イライラなどの男性化症状や、月経前障害的な副作用が無視できない場合が増加しました。このため、第2世代も改良され、Pを経時的に増減するやり方(Eはほぼ一定)が開発されたのです。低容量ピルのうちでも、この仲間が現在日本の主流となっています。
 さらに、服用方式によって2タイプに分けられます(どちらも月経周期1〜2日から服用開始)。1つは1日1錠服用を28日周期(休薬期間なし)で繰り返し、もう1つは1日1錠を21日間服用し7日間休薬期間をはさみます。28日タイプでは最後の7日間の錠剤は偽薬(実効成分ゼロ)なので、両者のホルモンパターンは変わらず、服用21日を過ぎ、数日後に消退出血があります。
 避妊以外にも、ピルの利用法があります。㈰月経移動=旅行、受験などから月経を外したいとき。1カ月前の月経開始1〜2日目から12日間程度服用し、予定行事の前に出血を終わらせます。㈪月経痛軽減=避妊の場合と同様に服用します。
 また、緊急避妊措置として、中容量ピルの一時的な大量服用法があります。性交渉後72時間以内に4錠を2回に分けて服用する方法です。
 なお、ピルの連続服用期間は2年以内にすべきです。


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より快適な生活のためのブライダル・チェック


vol.52
近い将来、大人の女としての“たしなみ”になる!?
より快適な生活のためのブライダル・チェック

 結婚を控えている人や、遠くない将来に結婚の予定のある人が健康診断を受けることを「ブライダル・チェック」と呼び、最近では結婚前の常識となっているようです。今回は女性版のブライダル・チェックについて、宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんに伺いました。


 桜が過ぎ、一年で最も美しい新緑の季節です。大学進学・就職にともなって希望に満ちた新しい生活をむかえた方が大勢いらっしゃると思います。また、6月にかけて結婚式を挙げるカップルのことを、周囲で見聞きする機会も増えているのではないでしょうか。
 女性がより快適な生活を過ごすための基本、大人の女性の基本として、婦人科に関する健康チェックを受けることは重要ポイントの一つと思われます。結婚することを前提に行う婦人科検診はブライダル・チェックと呼ばれますが、今回は、大人の女性になったことを自覚する意味での検診をも含めます。

■必要な検査項目とは——
 まず、月経について。基礎体温を記録し、排卵を中心として月経を考える習慣をつけてください。出血=月経と決めつけないように。
 次に、器質的異常に関するチェック。内診と超音波検査で、子宮・卵巣・卵管・膣・外陰部での異常の有無を調べます。特に、月経痛・月経過多・不正出血などの症状がある場合、医師にその旨を伝えてください。
 さらに、主に性交渉を通じて広がる感染症(STD)についても、調べておくことが望まれます。最も多いSTDはクラミジア菌によるものですが、症状が軽微のことが多く、感染しても気付かないこともある菌です。淋菌にも注意が必要です。また、B型・C型肝炎ウイルスもSTDの一つと言えます。何らかのリスクがあれば、梅毒・エイズウイルスにも範囲を広げましょう。
 そして、子宮頚癌(がん)の検診=頚部細胞診も受診してください。主因はある種のパピローマウイルス感染とされていて、性交渉によってもたらされるものです。従って、性交渉を経験したら子宮頚癌にかかるリスクが生じているのです。20代での発病も多く、自治体検診でも「20歳になったら頚癌検診を」と勧めています。
 ほかに、甲状腺触診と尿定性・貧血・風疹抗体・トキソプラスマ抗体の検査が加わると、より良いでしょう。


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基礎体温表で自分の性周期・月経周期を知りましょう


Vol.51
理解しているようで、していない!? 月経・排卵の基礎知識
基礎体温表で自分の性周期・月経周期を知りましょう

 月経が遅れ、“妊娠?”“病気かしら?”と、不安に思った経験がある人も多いのでは。でも、月経と排卵の基礎知識がしっかりしていれば、必要以上に不安になったりはしなもの。今月は排卵と月経の基礎知識について、宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんに伺いました。

 月経・排卵について、自分の知識だけで判断するには自信をもてない場合があると思います。そうしたときのためにも、女性は排卵・月経周期=性周期に関する基礎知識を深めておきましょう。
 卵巣の役割とは㈰排卵すること ㈪卵胞ホルモン(E)と黄体ホルモン(P)を分泌することです。その卵巣を刺激し、機能させるのが脳下垂体ホルモン(FSHとLH)で、さらに下垂体は隣接する視床下部からの刺激を必要としています。すなわち、“視床下部→下垂体→卵巣→排卵・EとPの分泌→妊娠か月経”の流れが性周期を作り、それは12歳ごろから50歳くらいまで続きます。

■排卵を基準に性周期を考える
 以下、下垂体・卵巣・子宮の範囲に限定して話を進めます。
 月経の終わりごろから、FSH分泌が増加します。これに刺激を受けた原始卵胞(卵巣内に多数あります)が成長。さらにLHが一時に放出されると、卵胞から卵子が飛び出します(=排卵)。その過程で卵胞はEを分泌し、そして排卵後にはPも産出するのです。
 さて、卵子が精子と合体し子宮に着床すれば妊娠成立ですが、妊娠しなければE+Pの効果で厚くなった子宮内膜は崩れ落ち、血液と共に子宮外へ排出されます。これが月経です。まず排卵があり、その後に月経があるわけです。ですから、排卵を基準として性周期を考えることに、慣れておくべきなのです。
 そうは言っても、排卵を自覚することは難しいことです。では、どうすれば良いか。それは基礎体温を記録することです。次回排卵日を予測することはできませんが、最終排卵日の確認には力を発揮します。
 基礎体温表上、月経開始から排卵までは低温が続き(多くは14日〜16日)、排卵すると0・5度ほど高くなり、妊娠しなければ約2週間で下がって、月経が来ます。排卵が遅れると低温が続き、妊娠の場合には排卵後2週間以降も高温のままで続きます。
 この基礎体温表は、記録しておくといろいろなときに役立つのです。


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女性を悩ませる更年期障害—その原因、治療、副作用—


vol.48
日本産婦人科学会が提示したホルモン療法の指標案とは
女性を悩ませる更年期障害—その原因、治療、副作用—

 女性の心と体を大きくゆさぶる更年期障害。その治療法として有名なのがホルモン療法です。でも、副作用に対する不安もつきまといます。これに対し、医療現場はどうとらえているのか。宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんが、最新情報を教えてくれました。

 閉経(卵巣機能が停止すること)による最大の変化は、卵胞ホルモン(E)が著しく低下することで、その前後に心身の不調が起こった場合を更年期障害と呼びます。
 E低下の直接的影響として起こる症状は、皮膚粘膜の萎縮・顔面などのほてり・不快な汗・骨の弱体化による痛み、など。間接的影響としては、憂鬱感・不安感・不眠・めまい・頻尿・動悸・肩こり、などが挙げられます。
 対策として、Eの補充が挙げられますし、実際に有効性は明白です。しかし、Eによる副作用(特に、子宮体ガンと乳ガンの発生を高める可能性)も無視できません。有効性と副作用のジレンマは、婦人科医積年の悩みとなっています。

■卵胞ホルモンの効果と副作用

 こうした状況を打開すべく、日本産婦人科学会は内外の文献を参照して、昨年12月にホルモン療法(HT)の指標案を提示し、会員に意見を求めたのです。
 最新の情報として、指標案の中で妥当性と重要性が高いと思われる部分を抜粋して紹介します。まず使用禁忌とされているのは、重度の肝疾患・乳ガンや子宮内膜ガンの罹患者と既往者・原因不明の子宮出血・妊娠中・血栓症の罹患者と既往者・冠動脈疾患・脳卒中既往者。また、60歳以降からの使用は効果が期待できないようです。
 次にHTの効果について。㈰ほてり感・頻尿・関節痛を改善する ㈪骨密度を増加する ㈫悪玉コレステロールを下げ、善玉を増やす ㈬血圧に変動を与えない ㈭閉経後の認知能力を改善する ㈮更年期の抑うつ気分を改善する ㈯皮膚の厚みを増す ㉀性器粘膜の萎縮を改善する。また、過活動膀胱にも有用だとされています。
 副作用は、㈰不正子宮出血 ㈪乳ガンを増加させるとは断定できないが、黄体ホルモン(P)との混合療法でリスクを高める ㈫血栓症の発生を2〜3倍増加させる ㈬子宮内膜ガンの発生を高める(Pを併用すれば高めない)、などです。
 なお、最近話題の微小血管狭心症についての言及はありませんでした。


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受け身じゃない生き方のための妊娠計画


Vol.49
女性が持っているのは「生む権利」だけではありません
受け身じゃない生き方のための妊娠計画

 “結婚はしたけれど、子どもはもう少し仕事をしてから…”と思う女性も増えています。悔いのない人生を送るためには、きちんとライフプランを立てておきたいもの。宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんは「女性には生まない権利もある」と話してくれました。


 女性の生活を大きく左右する妊娠・出産。まだ子どもが欲しくないという場合は、避妊することです。多くの産婦人科医は次の3つの避妊法を推奨しています。
 1つ目は基礎体温表に基づいた避妊法で、高温期3日目から月経開始までの期間は妊娠しないことを利用します。この方法は体に操作を加えない自然な避妊法です。
 2つ目は経口用ピルを用いる方法です。定期的に正しく服用していれば、月経様出血は起こりますが、排卵は抑止されますので妊娠することはありません。現在、ホルモン値の低い低容量ピルが主に使用されています。ただし、連続して服用する場合は最高2年間が限度で、少なくとも半年間の休薬期間を設けるべきです。さらには、定期的に、副作用防止のため血液検査を受けることも必要です。
 また、ピルによる緊急避妊法もあります。妊娠可能時期の性交渉後72時間以内にピルを多めに服用することで、妊娠の阻止を図るものです。体への過大負荷を考えると、多用は慎むべきです。
 3つ目はIUDで、子宮内に特殊器具を装着することで精子の子宮内進入や受精卵着床を防ぐ避妊法です。改良が重ねられ、装着・除去が容易になってきています。最近では銅線や黄体ホルモンを付加した製品も登場し、効果がより確実になりました。

望まない妊娠は心にも大きく影響
 最後に、望まない妊娠が成立してしまった場合について。どうしても生めないのであれば、母体保護法指定医に相談し、中絶処置を依頼するほかありません。法律で、母体の健康・経済状況に大きな災いを起こす可能性のある場合、妊娠21週までの人為的妊娠中絶が認められています。
 しかし、この処置を受ける際、深く悩んでしまう女性がとても多いと思います。罪悪感・羞恥心、処置後に起きる後悔と自責感など。そうした時、体だけでなく心も母体保護法指定医に委ねてください。私たち指定医は経験と思索を通じて、出産介助と中絶手術に本質的違いのないことを確信しているからです。


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音楽療法は抑うつ不安神経症にも効果的!


Vol.48
ストレスを受け流せる心のパワーをビートルズで補給
音楽療法は抑うつ不安神経症にも効果的!

 今の日本はストレス社会とも言われています。とは言え、同じストレスを受けても耐えられる人と耐えられない人がいます。その差は心のエネルギーに関係するようです。宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんに、ストレスと心のエネルギーの関係について伺いました。

 “憂うつ感が長く続いている”“何もする気にならない”“考えがまとまらない”など、心の不調を訴えて来院される方が後を絶ちません。
 心因となりうる状況を尋ねますと、「職場の先輩たちの冷たい態度に身がすくみ、出社が辛い」「子どもの部活などの付き合いに気を遣い、疲れ果ててしまった」「隣家の犬をめぐって行政に善処を求めているが、真剣に取り組んでくれずイライラが募る」などです。
 社会に苦しめられている人々を診ていますと、ノーベル物理学賞で話題となった「素粒子」は妙美の神秘性をたたえているのに、「その集合体である人間になると、なぜ濁ってしまうのか?」と、嘆息するばかりです。

■失った心の安らぎを取り戻す
 苦しんでいる患者さんの環境がすっかり変われば症状も消失するでしょうが、実現できるとは限りません。
 そこで、「過剰負荷によって消耗させられた心のエネルギーを補てんし、心に安らぎを復活させられるならば、同じ環境が続いても、ある程度ストレスを受け流せるようになるのでは」との考えが浮かんできます。この考えは「抑うつ不安神経症」治療に活かされており、具体的には薬剤療法と精神療法とで対応しています。
 さて、音楽を用いる精神療法(音楽療法と呼ばれる治療法)があります。一つは自ら音楽を奏でることでストレス開放を計り、一つは音楽を聴くことにより、心に安らぎとエネルギーを与えます。
 うつ・不安に対して効果のある楽曲を、3種類ご紹介します。㈰プッチーニの女声アリア…プリマ・ドンナの悲しみ、不安、絶望、苦悩は個人を超えた普遍性をもち、深い共感で聞き手を満たします ㈪初期のビートルズ作品…古代ケルトから受け継いだ、生き続ける存在として心底からほとばしった唄 ㈫ミッシェル・ポルナレフのピアノ即興演奏…「永遠と無限」を楽曲化したベートーベン音楽への憧憬!
 皆さんもぜひ一度聴いてみてください。何をしても心が晴れないときは心の専門医へ。


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不正出血にはどんな病気がひそんでいる?


Vol.47
不正出血にはどんな病気がひそんでいる?
自分の体を管理していれば診断の参考にもなります

 女性にとって“不正出血”は大きな不安となるもの。?少量だから大丈夫?と自己診断してしまうのも、“ガンだったらどうしよう”と慌てすぎるのもよくありません。そこで宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんに不正出血の原因と病気について伺いました。

 女性は十数歳から50歳前後までの間、妊娠・授乳期間を除き、およそ月に一度の出血=月経を繰り返すのですが、月経以外の出血=不正出血を経験することも希ではありません。出血部位は子宮内部(内腔)と、それ以外の組織(子宮頸部が主)の2つに大別されます。

■原因は1つや2つではありません
 内部からの出血で一番多いのが、排卵にまつわる子宮内膜からの出血です。
1)排卵期出血…決まって排卵直前(月経と月経の中間期)に起こる、赤いおりものと感じる程度の出血。治療の必要はほとんどありません。
2)無排卵・排卵遅延に伴い、基礎体温の低温期に限り起こる出血…頻度の高い不正出血で、基礎体温を記録されていると非常に参考になります。ただし、後述する体がんの検診を受けるべきでしょう。治療の基本は排卵を安定させることで、私は第一選択として漢方製剤を使用します。更年期出血の大部分も排卵停止への過渡期にあることが原因です。

 腫瘍によって内部からの出血が起きることもあります。
1)内膜から茎状に発生した子宮筋腫や内膜ポリープ…筋腫が子宮外へと排出される場合(筋腫分娩)には痛みを伴います。
2)内膜の悪性腫瘍である体がん…増加傾向にあり、特に閉経周辺の内部からの出血は注意が必要で、内膜に対する細胞・組織検査が不可欠です。

 次に、頚部からの出血について。
1)頸管ポリープ…通常は簡単に除けます。
2)頚がん…全く症状がなくとも年一度の検査を受けるべきです。検査は、まず細胞検査を行い、何らかの異常が疑われたら拡大鏡検査・組織検査へと進みます。正常→軽度異型→高度異型→上皮内がん(極めて浅いがん)→本格的がん、という流れが細胞変化に反映されることが、頚がんについては確認されています。

 最後に、婦人科医の心からの願いを。日ごろから基礎体温を記録し、月経か不正出血か迷ったら、医療機関を受診してください。


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筋肉組織の若さを保つことがアンチエイジングへの近道


現役のスポーツ選手が老けないのは、筋肉が若いから!?
筋肉組織の若さを保つことがアンチエイジングへの近道

 北京五輪で活躍するベテラン選手を見ながら、“この年齢で世界と戦えるなんて凄い! それに老けないなぁ”と感心した人も多いのでは。宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんもそこに着目。今回はアンチエイジングのための運動について教えてくれました。

 現代の中国を見ていますと、中国最高の思想家・老子の「国は小さいのが一番」が全く忘れられてしまったようで、寂しさ極まりなしです。そう思いながらも、中国五輪を見ていて、世界状況はさておき、アンチエイジングと運動との関係へと考えを変換しました。

アンチエイジングのための運動は“楽にやる”
 運動によってアンチエイジング(加齢による体への悪影響を緩慢にすること)を図るポイントは、運動を通じて筋肉組織の若さを保ち、なおかつ、運動による疲労・骨や関節に対する負担を少なく押さえることにつきるでしょう。筋力が衰えるにつれて成長ホルモン値が減少し、基礎代謝量が低下して肥満になりやすくなり、加齢が加速するからです。
 そうした際の運動の基本は、運動時に“楽である”と感じられる範囲にとどめることです。
 具体的方法を紹介しましょう。
㈰ストレッチング…毎日5分間が望ましい。筋肉・腱をゆっくりと引き伸ばす
㈪有酸素運動…ウオーキング・水泳・自転車。30分間、週3回が理想
㈫筋肉トレーニング…自分の体重を利用する体操がお勧め。膝つき腕立て伏せ・スクワット・仰向けからの軽度の上体起き上がり(軽い腹筋運動)・大腿のアイソメトリックス(筋肉を動かさず、緊張させて行う体操)など
 ところで、日常どのように心がけたら筋肉疲労を少なくし、関節・骨などへの負担を減らすことができるのか? 参考にできる本があります。甲野善紀さんと荻野アンナさんの共作「古武術で毎日がラクラク!」です。
㈰疲れない立ち方…胸を落とし、背中からお尻までを自然に丸める。膝をゆるませ、重心を土踏まずに置く
㈪イスからの立ち上がり方…頭を前方へ倒し、頭の重さを利用して体を浮かし、ゆっくり立つ
㈫階段の上り方…同じ側の手足を同時に進めて上る
 疾患をおもちの方は、主治医と相談して運動を計画してください。


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その月経痛、耐えているだけで大丈夫ですか?


今月から保険に適応する低容量ピルが発売に
その月経痛、耐えているだけで大丈夫ですか?
 女性の体の悩みとして、多く挙げられるものの一つに月経があります。月経痛、イライラ、吹き出物などに、うんざりしている人も多いのでは。今回は月経痛の原因や、月経痛に隠れている子宮内膜症について、宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんに伺いました。
 初潮から月経痛(腹痛・腰痛)に悩まされている若年者の場合、子宮頚管が硬く狭いせいで月経血を子宮内から排出しにくいことが、原因の大半であると考えてよいでしょう。さらには、月経が始まったことに対する不安や、月経についての古くからの?ケガレ観?の悪影響が、思春期女性の痛みを増すように、私は感じます。
 このタイプの痛みには、漢方製剤や心理的カウンセリングが効果的です。また、妊娠・出産を経験すると症状は軽くなります。
■不妊症の原因にもなる子宮内膜症
 一方、年齢を重ねるに従って痛みが発生・増強する場合もあります。主たる原因は子宮内膜症です。子宮内面だけに存在しているはずの内膜組織が、骨盤内に進出・増殖していく疾患です。月経時の進出内膜出血による周辺臓器との癒着・部分的腫脹(卵巣チョコレートのう胞など)、進出内膜の脱落に由来する激しい痛みが主な症状です。
 この疾患は腫瘍ではなく、悪性化する例はごく希ですが、耐え難い痛みで女性を苦しめるだけではなく、前述した癒着が不妊症の原因になる場合があります。
 根本的治療法は、排卵・月経を止めることです。閉経が近い方には、人工的に閉経状態にする薬剤療法が勧められます。順調に排卵が続いている方には、ピルを用いて一定期間の無排卵をもたらす方法を選択する医師が多いようです。
 副作用を少なくする観点からすると、含有ホルモン量のより少ないピル(低容量ピル)を使用したいのですが、この6月までは低容量ピルには保険適応がありませんでした。けれども今月から、内膜症への保険適応のある低容量ピルが発売となり、ピル治療の安全性が高まりました。
 毎月繰り返される激しい痛みの影響は心にも及び、月経が近づくと不安・イライラ・憂うつ感が強まって、身体的な原因が主体である月経前の不快症状を、より深刻化させることもあります。我慢をせず、信頼できる専門医を受診してみてください。


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女性の天敵“冷房病”を防いで、今年の夏を乗り切りましょう


一日中、エアコンの効いた部屋にいるのに、なぜかイライラ……
女性の天敵“冷房病”を防いで、今年の夏を乗り切りましょう

 一昔前まで、暑いと言っても気温が30度を超えることは、あまりありませんでしたね。じわじわと押し寄せる温暖化の波。それと同時に会社や店舗の冷房がどんどん強くなっています。今回は女性の天敵とも言える“冷房病”の症状と対策について、宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんに伺いました。

 さわやかな5月は瞬く間に過ぎ去り、梅雨を経て蒸し暑い夏へと確実に進んでいます。地球が今後しばらくは温暖化していくとの予想もありますが、これ以上暑くなるのではたまりませんね。
 温暖化を焦点とするサミット会議が涼しい洞爺湖畔で7月に開催されるようですが、酷暑の東京での方が温暖化の深刻さを首脳陣に痛感して頂けて、会議の真剣みが増すようにも思えます。
 さて、自宅ではまだかもしれませんが、職場・デパート・美容室・飲食店などでは、もう冷房を効かせているところが多いようです。けれども、「夏の暑さよりも冷房病のほうが怖い」という声を、特に女性から聞きます。冷房病とは正式な診断名ではありませんが、病態を的確にとらえた呼び名だと思います。

■ポイントは“体温の低下”
 冷房病の原因の1つめは、冷たい風を身に受けることによる体の低温化です。低温で冷やされると共に、人工的な風で体温を奪われるからです。“冷える”とは身体機能が低下することにほかなりません。
 ところで、「カゼは万病の素」と言われますが、「カゼ」とは咳やクシャミの風邪ではなく、流動気体としての風なのです。ですから冷房病には、頭痛・肩こり・鼻咽頭炎・腰痛・関節痛・腹痛・下痢・膀胱炎・頻尿・月経不順など、さまざまな症状が出現します。
 2つめの原因は、暑い屋外と冷たい室内の温度差によるものです。急激な温度変化の差が5度以上になった場合、ヒトの自律神経は混乱に陥り、いわゆる自律神経失調症状態となります。具体的症状として、食欲低下・イライラ・不眠・動悸・めまい・慢性疲労などです。対策として、
1)室温を下げすぎない
2)直接に風を受けないようにする
3)カーディガンやスカーフで肌を包む
4)適宜、温かいものを摂り、冷たいものは控える
5)ときどき体をストレッチする
6)夜はシャワーではなく入浴を
7)スイカ・メロンは体を冷やすので控える
 などが挙げられます。
 また、「冷房病にかかったな」と感じたら、早めに医療機関に相談してください。最も効果を発揮するのは漢方製剤です。
消化器症状→香蘇散・桂枝人参湯・真武湯
心理的症状→桂枝加竜骨牡蠣湯
痛み→当帰芍薬散・疎経活血湯
めまい→苓桂求甘湯
疲労→人参養栄湯
頻尿→附子製剤
 をお勧めします。
 体の不調は心理面にも大きく影響を及ぼしますから、できるだけ症状の軽いうちに医師に相談することが大切です。


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アンチエイジングに大切な5項目


vol.44
いつまでも若々しく、美しさを保つために大切なこと
アンチエイジングに大切な5項目を気に留めましょう

 一つ年を重ねるごとに、体の変化を感じている人も多いのでは。いつまでも若いつもりでいても、体は正直なもの。でも、できるだけ加齢に抵抗したいですよね。今回は宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんにアンチエイジングのために気を付けたいポイントを伺いました。

 だれしも若々しく美しい生活を続けたいものです。そうした思いを受け止めようとする医学=抗加齢(アンチエイジング)医学に基づき、加齢度について考えましょう。
㈰血管年齢
 動脈の弾性は抗加齢の重要ポイントです。頸動脈超音波検査法や眼底検査を用います。弾性の劣化=動脈硬化を防ぐには、経口物質に関して偏りを減らし、一定のものを摂りすぎないことにつきると思います。
㈪ホルモン年齢
 IGF—1(成長因子1)、DHEA(副腎皮質ホルモンの1種)の濃度で判断します。2つのホルモン値を保つ基本は、体をなるべく動かす・緊張した後には心のリラックスを図る、を忘れないことが大切です。
 女性の場合、50歳前後に始まる卵巣ホルモン補充が著しい効果をもたらしますが、副作用を考慮しての安全な投与期間について、専門医の間でも定説はありません。
 ただし、骨粗しょう症対策に用いられる卵巣ホルモンレセプター活性化剤(SERM)は長期服用が可能です。
※㈰㈪ともに良質な睡眠が加齢を防ぎます
㈫筋力年齢
 握力や坐位からの起きあがりテストを用います。筋力を保つには、30分程度の歩行・ストレッチ・受け身運動(体を丸めて転がり起きあがる、という行動をなるべくおおげさに繰り返す)などが有効です。美容にも良いでしょう。
㈬骨年齢(特に女性の場合)
 DXA(二重X線呼吸法)が一般的で、閉経前後からSERMとビタミンD3の服用が推奨されています。歩行能力を保つために重要です。
㈭脳神経年齢
 脳年齢計・WCSテストなどで認知力を見ます。どのように暮らしたら認知症になりにくいか? アルコールとタバコを少なめにし、目的をもった生活を送ることが基本だと思います。

 さて、美しさについてですが、前述した5項目に留意し、自然、そして人間が創り出した美しきものに心ときめくことこそ、自らをさらに美しくする魔法である、と私は考えます。


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不安にうち勝つには分析と開き直りが必要


Vol.43 新しい環境に対する思い。大きいのは不安? 期待?
不安にうち勝つには分析と開き直りが必要

 新年度が始まり、新しい環境で生活をスタートした人も多いのではないでしょうか。そんなとき、常につきまとうのが?不安?。この不安にどう対処すれば良いのか、宇都宮市大寛にあるうえの医院の院長・上野裕さんに伺いました。


 本人または家族の入学・就職・転職などで、4月は環境の変化が多い時期です。それに伴い、不安定な気持ちになる人も当然に増えると考えられます。
 「不安定に陥らないためには(あるいはそうなってしまったら)、どのように対処すれば良いのか?」。これは毎日のように受ける質問です。
 対策の基本は、変化に伴う不安・心配を、避けるべき感情と認識しないで、抱いて当然のものと思い定めることです。程度の差こそあれ、だれでも心中が穏やかなわけではありません。変化の時というのは、だれにとっても不安な時なのです。そう思うだけで、?期待感?という、変化に伴うもう一方の感情が心を満たすのではないでしょうか。


■不安の原因と解決策を考える
 PTAの役員など、これから新しい環境に入る方で、不安でならないという方のために、少しアドバイスをします。
 まず、不安の原因が何であるのかを分析するべきです。原因が特定できたら、それについて自分で解決ができるかを検討し、できるのならばそれにそって努力する。もし、自分だけでは解決できないと感じられるなら、それを補う手段を講じます。それもなければ、自力で新環境に飛び込むだけです。
 栃木県人は内弁慶で新しさに臆病と言われますが、既成概念にとらわれない北海道人や、恐れずに新しい分野に向かっていく遠州人(静岡県西部/本田宗一郎が好例)を見習うのも、悪くはないと思います。
 次に、原因が特定できなかった場合。多くは新たな対人関係への漠然とした不安が原因のようです。そうした方に必要なのは、良い意味での開き直りです。例えば、大阪人のように見栄や立て前を減らした人付き合いをする。周囲の人間と?かりそめの役割を演じ合ってはいるが、役割は恒常的なものではない?と考え、しばらく演技を甘受してみるのも一つです。
 それでも、現状に耐えられなくなったら、心の医療機関に相談してください。


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よく寝たはずなのに、ついウトウト…。これって春のせい?


Vol.42 よく寝たはずなのに、ついウトウト…。これって春のせい?
日中の眠気・居眠りに病気が隠れていることも

 「春眠暁を覚えず」という言葉があるように、この季節は特に、日中も眠気が襲ってくるもの。でも、それは陽気だけの問題なのでしょうか? 宇都宮市大寛にあるうえの医院の院長・上野裕さんに、日中の眠気・居眠りの原因について伺いました。

 人の覚醒(かくせい)リズムは、朝から夕方までの活動モード、夕方から夜への休息モード、深夜から翌朝までの睡眠モードと大別できます。
 けれども、ストレスによる睡眠の劣化のためか、春の陽気のせいか、活動モードであるべき時間帯に覚醒状態を保てず、強い眠気が生じてウトウトしがちな方が増えたように思います。ところが、日中の眠気・傾眠が病気のために出現している場合もあるのです。昼間に眠気を感じることが多くなったら、医療機関に相談してください。

■考えられる3つの疾患とは—
 そうした疾患には「ナルコレプシー」があります。昼間の耐え難い眠気と居眠りが続き、居眠りは20分くらい続き覚醒後はスッキリしますが、また眠気が襲ってくる。大事な会議中、入学試験中、好物の食事中でも眠ります。さらに特徴的なのが、発作性の筋力低下・入眠時の金縛り状態・就寝中の恐ろしい幻覚、を訴える場合が多いことです。この疾患には、薬剤による治療が必要です。
 また、「反復性過眠症」も挙げられます。強い眠りに支配される期間が2〜3週間出現し、その時期が過ぎるとまったく症状は消失する、というサイクルを反復します。眠りの時期には一日中睡眠が続きますが、面白いことに食事と排泄は自発的に行えます。この疾患には、確立された治療法はありません。
 そして、もう一つ「突発性過眠症」が挙げられます。若者に多く、筋力低下・金縛り・幻覚はありません。生活環境に強い不満をもつ場合が多いので、心のストレスを緩和することから始め、軽めの抗うつ剤と漢方薬を服用していただきます。
 最後に、眠気・居眠りを改善する生活スタイルをアドバイスしましょう。ダラダラと夜更かしすることをやめ、休日でも起床時間を遅らせないことを基本とします。可能なら昼食後に10分〜20分間の仮眠を取る。食事では食塩を控え、栗・クルミ・ヤマイモを多めに食べるようにします。胃腸に問題がなければ、お茶は濃いめにした方が良いでしょう。


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思春期にかかりやすい心の病の特徴、そして家族の接し方は?


Vol.40 思春期にかかりやすい心の病の特徴、そして家族の接し方は?
認められたいという思いを満たしてやることが大切

 中・高生になると、親子の会話も少なくなりがち。だからこそ、心配や悩みの種が増えますね。思春期は難しい年ごろ。この時期特有の心の病の特徴や家族の対応の仕方について、うえの医院の院長・上野裕さんに伺いました。

 思春期は、誰にも訪れる激しい変化の時です。性が開花し、未知の世界と向き合わざるを得なくなる。心理的にも自分の存在・価値を友人や特別の異性に認めてもらいたい欲求(=自己愛)が高まり、不安定になりがちです。
 「自己愛はわがままの延長であり、自分への愛が他者に向かうように教育するべきだ」との意見もあります。ですが、現在の心理学では、人に認め・褒めてもらいたいという願望(自己愛)は自然なもので、そうした気持ちに上手く対処していけば、自己のイメージが安定し、社会を肯定的にとらえられるようになる、とする考えが主流です。

■不健全な自己愛が社会不適応の原因に
 問題は生育過程で自己愛が十分に満たされず、不健全な自己愛をもつようになったときです。この場合は、他者との関係を上手く築けないことが多くなります。特に思春期には、自己の価値を他者から低く見られまいとして、必要以上に自己顕示する人、逆に他者との関係を減らし、自分に閉じこもる人が増えます。
 そうした行動が極端になると、“不登校・引きこもり”など静かな反抗状態を続けたり、自己顕示のため刃傷沙汰に及ぶ例さえ出てきます。いえ、他者との関係を避けようとしている場合でも、根底には「世間は自分を認めてくれない」という欲求不満がたぎっていますので、それが爆発すると、激しい攻撃性反抗に豹変することもあるのです。
 健全な自己愛をもった思春期に到達するために重要なのは、「親から承認・賞賛を基本とした養育を受けること」、「周囲に尊敬に値する大人が存在すること」。この2つを私の尊敬する精神科医・コフートは挙げています。
 さて、社会を肯定的にとらえられない若者にどう対処したら良いかという点ですが、家族や周囲の人間が共感を持って接し、社会現象の多面性と奥行きの深さを辛抱強く語って、そのことを本人に理解させるしかありません。また、専門医への紹介が必要な場合もありますので、まずは相談してみてください。


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ストレスや不安がうつを生み、それがストレスになる悪循環を打破するには…


〈Vol.39〉 ストレスや不安がうつを生み、それがストレスになる悪循環を打破するには…
笑顔がもたらす効用で心を回復させましょう

 周りから見たら他愛もないことでも、本人にとってはひどく落ち込むこともありますね。その気持ちが長引いてしまうと、心が浮上できなくなってしまうことも…。そんなとき、どうしたら良いのか、うえの医院の院長・上野裕さんに伺いました。

 「なぜ、太陽は輝き続けているの? 心臓は鼓動を続けているの? 世界が終わりだというのに…」。1963年、米国のヒット曲の一節です。決して、終末を予言した超能力者の言葉ではありません。単に失恋の悲しみ・驚きを唄っているのです。失恋しただけで“世界の終わり”となる気持ちに共感が集まるのですから、人の心とはなんと大げさなところがあるのでしょう! そのため、心の不調が致命的になったり、心への治療に多くの専門医が苦労しているのだと、思います。


■“笑い”をつくることも必要

 とは言え、心は柔軟性も持ち合わせている。だからこそ、多くの災害・疾病・戦争などを経験しても、人類は歴史をつなげてこられたのでしょう。“鈍感力”や“忘れっぽさ”も柔軟性の一つかもしれません。
 ところが、現代日本においては、受け流せない、そして忘れがたいストレスにさらされる可能性が少なくありません。そして心の余裕が減り、“ストレスが不安やうつを生み、それがストレスになる”という悪循環に陥ってしまうのです。
 悪循環を改善する一つの方法として、“笑い”を考えてみましょう。哲学者・ベルグソンは“笑える”必要条件に 1.対象に必ず人間的なものを含む 2.冷静な理性が働いているときに限る 3.他者との連帯を感じられる状態にある、という3つを挙げています。
 うつ・不安状態とは、まさに三カ条を満たし得ない状態なのです。逆に、笑いが少なくなってきたら、積極的に笑うことで三カ条を満たせる心に戻せるのではないか、という発想も浮かびます。
 生理学的に言い換えると、楽しい時、気持ちが良い時に分泌されるドーパミンを、笑うことによって増やし、うつ・不安の改善を図る、ということになるでしょうか。
 具体的には、鏡に笑顔の自分を映す、楽しい漫画や映画を観る、などが思い浮かびます。そして、子どもたちの生き生きした笑顔を眺めることです。それでも笑顔が取り戻せないときは、心の専門医にご相談ください。


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受験する本人以上に募る不安や心配、どうしたら良い?


Vol.38 受験する本人以上に募る不安や心配、どうしたら良い?
感情的にならず、わが子を理性的に評価することが大切

 受験シーズンが近づき、子どものことで心が不安定になっている人もいるのでは。でも、いくら気を揉んだところで、受験するのは子ども。では親がしてやれることとは? うえの医院の院長・上野裕さんに親の心構えについて伺いました。

 子どもの学習態度や成績に関して、悩んでいる方も多いと思います。特に、「育児は母親が主役」という風潮が抜けない日本では、受験期が近づくと母親の心が不安定になる傾向にあるようです。
 母のイライラや不安を子どもは敏感に察知し、子どもの不安も増す可能性があります。子どもたちは「親の期待に応えたい」という気持ちを強く持っているからです。
 では、子どもの生活、特に学業について、親はどのように受け取り、介在していくべきなのでしょうか?

■心理療法を応用して心を静める
 子どものこととなると親は感情的になりがちですので、まず、子どもを理性的に評価する方向へ変換することが大切です。具体的には、心理療法での?認知療法?を応用します。
1.子どもがとった2、3の言動で、わが子を評価しない。「期末試験の前なのに彼女と長電話」という姿を見て、親はイライラしたりガッカリしたりすることがあります。息子は勉強のことを話している、あるいは勉強への集中力が高まるのを待っているのかもしれません。心を静め、極端な評価は避けるべきです
2.子どもの心を勝手に決めつけない。「母は子どもの心を読める」という幻想にふけり、自分の思いで子どもを規定してしまう方は、よく見受けられます。母子は別の人格であることを確認しなければなりません
3.子どもの長所を低く見ない。小さなテストの場合でも良い点数を取ったときには、言葉で賞賛を伝えることです
4.「こうでなければ」という自分の考えを、子どもに押しつけるのはやめる。「大学受験で苦しまずに済むから、有名大学附属校に入れたい」と思っても、大学選択時の可能性をつみ取ってしまうことにもなります。親の考えが子どもを幸福にするとは限らないのです
 最後に。多くの子どもは親が心配するほど、受験に関してヤワではありません。私がお子さんの受験に関し親から相談を受けた例をみても、子どもたちは自らの努力で結果を出しているのです。


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体の緊張と心の緊張が引き起こす「頭痛」について


〈Vol. 36〉 “頭痛持ち”の方、ストレスがたまっていませんか?
体の緊張と心の緊張が引き起こす「頭痛」について

 定期的に頭痛が起きる女性は多いもの。ただ、一度痛み出すと長く続く人、痛む前に兆候がある人など、さまざまですね。宇都宮市大寛町のうえの医院にも、頭痛で来院する人が多いようです。同院の院長・上野裕さんに、頭痛について教えて頂きました。

 頭痛にはさまざまな原因が考えられますが、外来を訪れる方の約7割は「緊張型頭痛」と呼ばれるタイプです。頭部・頸部周辺の筋緊張によって起こり、“締め付けられるような”痛みが、心身疲労時に多発します。一度発生すると、長く続く場合が多いようです。
 痛みは後頭部から側頭部にかけて両側性にみられ、肩こり・くびのこりを伴います。治療にはまず休養。さらに、消炎鎮痛剤の内服・塗布・湿布を行い、筋緊張が強ければ筋弛緩剤を使用し、心理面で不安・緊張があれば抗不安薬を加えることも必要です。また、ぬるめの湯にゆったり浸かるのも効果的です。ただし、強すぎる(あるいは不適切な所への)マッサージは、症状を悪化させる可能性があるので、ご注意ください。
 日常生活では1.くび・肩への負担を減らすよう、自分の体型に合った椅子・机・枕を専門家のアドバイスを参考にして選ぶ 2.精神的ストレス(心の緊張)をためないようにする 3.スポーツクラブなどで、後頭部筋肉の強化を図る などを心がけると良いでしょう。

■ 脈打つような痛みの片頭痛
 さて、しばしば見受けられる頭痛がもう一つあります。それは「片(へん)頭痛」です。典型的な症状は、数時間から数日間持続すること、吐き気・光や音に対する過敏を伴うこと、一側性の“ズキンズキンと脈打つような”痛みであること、などです。脳血管の過拡張が原因と考えられ、遺伝性があって、若い女性に発生することが多いようです。頭痛発生前に、視野欠損・視野黒点・四肢のしびれ感が生じる場合もあります。
 主な治療は、脳血管収縮作用をもつ薬剤によるもので、発作の予防にも使用できます。過量のアルコールやカフェイン摂取を避け、睡眠と休養を十分にとることも大切です。さらに、心理ストレスが痛みを誘発するという意見が多いのですが、私も同感です。
 このように、大きなストレスは体にも悪影響を及ぼします。体に異変が出る前に、専門医にご相談ください。

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子どもの成長にも影響を与える「産後うつ症」とは


〈Vol. 35〉 わが子はかわいい、だからこそ守りたい―その思いが生む不安と抑うつ
子どもの成長にも影響を与える「産後うつ症」とは

 初めての妊娠・出産は、母親の心を多少なりとも不安にさせるもの。けれど、ある程度の期間を過ぎても不安感が消えない場合もあるようです。宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんに、新米ママが陥りやすい心の病について伺いました。

 母親の「わが子を守りたい、わが子は特別にかわいい」という気持ちは、妊娠中から徐々に育まれ、妊娠後期から出産後1カ月間では、ほとんど病的と言えるほどにまで高まります。そこから、分娩への危惧や出産後の発育に対する懸念が生じ、大部分の女性は多少の不安・抑うつを周産期に抱えるものです。
 しかし、出産を終えて数日を経過しても、不安や抑うつが軽快せず長引く場合は、「産後うつ症」と考えます。これは、気持ちの落ち込みや疲労感、イライラ感が産後数日間にだけ見られるマタニティー・ブルーとは、区別しなければなりません。
 一方、子どもは不快を感じたとき、安心を求めて母親に密着しようとする本能(愛着と言います)をもっています。ところが、うつ症の母親では、愛着に応えられず、子を安心させられない場面が多くなりがちです。それが度重なると、子も不安・抑うつ的に傾き、やがては心身両面での発育に問題が起こる可能性もあります。

■ 強迫神経症とも言える悩みも
 さて、産後うつ症は抑うつ(気力低下・倦怠感・憂うつ)が中心ですが、最近、特定の問題に関して不安が集中する「強迫神経症」とも呼ぶべき症状を訴える、育児中の女性からの相談が相次ぎました。
 例えば、「添い寝している子どもの呼吸状態が心配で、とても眠れない」「ガラス製ほ乳瓶が細かく割れ、破片を子どもに飲ませてしまうのではないか」などの訴えです。
 このような場合も広くは産後うつ症なのでしょうが、わが子を必死に守ろうとする母親の思いの強さ・深さのなせる技とも感じられ、私は「母親」という存在に頭が下がりました。
 抑うつ・強迫のどちらの場合でも、2つのことが大切です。一つは、周囲からの温かい援助。「育児は女の仕事」などは論外で、育児こそ男女共同参画を実践すべき時であると、私は考えます。もう一つは、心の専門医に相談することです。授乳中でも安心して服用できる薬剤もあります。

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読書離れが人間関係にもたらす弊害とは?


〈Vol. 34〉 読書離れが人間関係にもたらす弊害とは?
コミュニケーションに必要な他人への橋、自分への橋

 会話やコミュニケーションは、あらゆる人間関係の基本ですね。でも、最近ではコミュニケーション力の低い人が増えているようです。宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんに、コミュニケーション力を上げる方法について伺いました

 他者とのコミュニケーションについて考えたとき、1998年度国際児童図書協議会に向けた、皇后さまの講演内容(本にもなっています)が思い浮かびました。
 講演の主旨は、“自分と周囲との間にかけるべき橋がうまくかからないと、人は孤立をし、安定性を失ってしまう”ことと、そうならないためには“自分の根っこをもつこと”が必要だ、というものです。そして“根っこをもつ”ためには“読書が大切”だと、ご自分の思い出を中心に述べられています。
 豊かな文化の継承者としての自分を確立するため、そしてコミュニケーションを広げるために、良質な書物や言葉に接することが必要なのです。
 ところが現代の日本では、読書を愛する人々は減り続けています。結果、“根っこ”がしっかり育っていない人が増え、他者に相対するときに心が不安定になる悩みが多くなったのではないでしょうか。また、読書量の減少に伴い、言葉をぞんざいに扱う風潮も強まっています。言葉の美的側面や文化の象徴としての側面を忘れたせいで、社会に潤いが減り、余計に他者との関係=コミュニケーションを築きにくい世相になっているのです。

■ 心の不足を補おうとする姿勢が大切
 こうした社会に悩む人たちを、一朝一夕に変えることは難しいかもしれません。しかし、何かを始めなくては。
 皇后さまは前述の講演で、自分自身へ橋を架けることが大切だとも述べられています。自分自身に橋をかけるとは、品位を保とうとする心(自尊)と慈しみの心(親愛)を、高めることではないでしょうか。
 そして、心に不足するものを、自然の妙や、人類が遺してきた書物・音楽・美術などで補う。その姿勢が、個人・社会を変革して行くこと、コミュニケーション力を上げることのきっかけになると、私は考えます。
 コミュニケーションは身近な人とうまく行かない状態が続くと、不安や抑うつなどの神経症に陥る場合もあります。そうなる前に、専門医にご相談ください。

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気質により攻撃性が高まることも “苦手な人”と一緒にいるのが怖い


〈Vol. 33〉 気質により攻撃性が高まることも
“苦手な人”と一緒にいるのが怖い

 周囲に「苦手だなぁ」と感じる人はいますか? その人とはどう接していますか? 誰にでもある人間関係の悩みですが、ひどくなると心身に悪影響を及ぼすこともあるそう。宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんに、特定者恐怖症とはどんなものかを伺いました。

 職場、学校、近所、母親仲間などの小社会に、特定の“苦手な人”が誰にでもいるでしょう。その人が近くにいるだけで嫌悪感に襲われ、ひどい場合には体の震え・吐き気・めまい・動悸・悪寒といった身体症状まで出現することもあります。さらには苦手な人への攻撃性が極端に高まって、傷害事件という悲劇を巻き起こすことさえある。特定者恐怖症とも呼べる状態ですが、なぜそうなるのか、理由と改善法を考えてみましょう。
 クロニンジャー博士のパーソナリティー形成理論によると、人には生物学的・遺伝的に、新寄性追求(心のアクセルと呼ばれる好奇心や衝動など)・損害回避(心のブレーキ。心配性や怖がり)・報酬依存(人情)の3つの気質があると言います。特定者への恐怖とは、特定の人から批判・非難・不快な態度を向けられたことへの過剰反応が激しい損害回避行動を誘発し、さらなる批判・非難・不快な態度を回避しようとする心の動きです。しかし、現実には特定者を完全に回避することはできないため、心に大きな不安と絶望が生じ、心身に恐怖症状が出現するのです。特に報酬依存気質が強いタイプは、他者を信頼したい気持ちがおう盛なので、症状は重くなりがちです。
 また、苦手な人への攻撃性が高まるのは、新寄性追求気質が強いタイプの場合です。このタイプは衝動的になりやすく、強い恐怖が異常な攻撃を誘発してしまう確率が高いと推定されます。

■ “鈍感力”も改善のカギに
 改善法としては、

1.じゃんけんの法則(=すべてに優位に立てるものはない)で社会は進む
2.悪い相性は人生の苦味料である
3.苦手な人は決して重要な他者ではない

の3つを心に刻んでください。医師・水島広子さんは「関係の改善よりも、相手の言動に鈍感になるべき」と言います。小泉前首相が“鈍感力”を強調したのも記憶に新しいところですね。それでも自分だけで改善できないことも多いと思うので、気軽に専門医に相談してください。

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いつも追われている感じがする、休日も仕事が気になってしまう


〈Vol. 32〉 いつも追われている感じがする、休日も仕事が気になってしまう
時間的焦りを感じる“タイプA”の行動パターン

 休日には一日中ゴロゴロとしていたいのに、家の用事や仕事が気になってできない。そんなまじめさが、心と体に負担をかけることも…。宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんが、最近多い質問から“時間的に焦りを感じる症状”について、説明をしてくれました。

 このところ、自分を「強迫神経症では?」と心配し、相談に来る方が少なくありません。例えば、

質問1.いつも追われている感じがして、ゆったりした気分になれず、絶えず何かをしていないと気がすまない
質問2.仕事のことが思い浮かんで、休日でも緊張が解けない

などです。
 以前にもこのコラムで書きましたが、“強迫”とは、大丈夫と確信していても万に一つの危険を恐れる気持ち(強迫観念)と、恐れを解消するための儀式的行動(強迫行為)の2つを特徴としています。戸締まりを何度も何度も確認する、何時間も手を洗う、すべての窓の枚数を数えないと気が済まないなど。これらは程度がひどければ強迫神経症と言えます。

■ 職場の過大なノルマに追われ…
 今回の質問1.2.に関しては“タイプA”が当てはまります。タイプAとは、1970年代に米国の2人の心臓病学者が、性格と虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)の相関を考察したことがきっかけで生まれた医学的用語です。特徴は、常に時間に切迫感をもち、できるだけたくさんのことを成し遂げようとするために、いつも時間が足りないという焦りを抱いている。絶え間ない時間との戦いが、人生から楽しみを奪い、心身に緊張を強いるのです。
 質問1.の方は、タイプAそのものではないでしょうか。常に時間に追われている悩みです。特に心身に疲れがある時こそ、切迫感は強まり、疲労と切迫感に交互に襲われる悪循環が形成されてしまうのです。
 質問2.の方の背景には、職場での過大なノルマがあるようです。ノルマは常に勤務者を圧迫し、そのためタイプA的な心情が強まってしまうのだと考えます。どちらも心を十分にリラックスできない状態になっているだけで、強迫神経症には当たらないでしょう。
 心身をリラックスする方法としては、ヨガや気功法を行う、流水バスにつかる、自律訓練法を試みるなど。心の専門医に相談することもお勧めします。

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通勤途中に起こる腹痛・頭痛…心のもち方で治るもの?


〈Vol. 31〉 通勤途中に起こる腹痛・頭痛…心のもち方で治るもの?
人間関係を円滑にしてストレスによる体調不良を防ぐ

 極度の緊張やストレスで、腹痛・頭痛を起こすなど体調が悪くなった経験のある人もいるのでは。職場や学校で受けるさまざまなストレス。特に人間関係の悩みは大きなストレスになると言います。そんなときどうしたら良いのか、うえの医院院長・上野裕さんに伺いました。

 出勤途中に急に腹痛を感じ、駅やコンビニのトイレに駆け込んだり、ひどいときにはそのまま仕事を休んでしまう。また、仕事のことを考えると頭痛に襲われる、憂うつになる、寝付けない、などの仕事上のストレスが主因となる訴えは、日常的に見受けられます。
 日本の職場は「一定の時間内にできるだけ成果を上げなければならない」という観念にとらわれているため、勤務時間やノルマで信じられない過酷さを求められ、激しいストレスにさらされている人が実に多い。
 もし、ストレスを感じていて、上記のような状態が現れたならば、信頼できる人(理想は職場内)に悩みを打ち明けるのが一番です。

■ 敵意を持たず、感謝の言葉を
 しかし、仕事そのものより職場での人間関係ストレスに悩んでいる人(特に女性)が多いことも、厚労省の調査でわかってきました。その対処法を考えましょう。
 職場内でストレス因となっている人間との対処法として、(1)相手の良い面を探そうとするなどのポジティブ対処 (2)強いて無視する・相手の弱みを探すなどのネガティブ対処 (3)成り行きにまかせるなどの先送り対処の3通りがあります。
 (1)が最良なのは言うまでもありませんが、実行できない場合が多いのが実状です。結果、(3)を用いて職場生活を過ごす人が多くなります。そして、不本意なところはほかの要素で穴埋めし、何とか破たんなく職場生活を過ごしているのです。
 けれど、どうしても(2)の対処をしてしまう人もいます。敵意を刺激されやすい人です。相手との関係で自分が主導権を握りたいのに果たせない。そこに大きな葛藤が生じ、さらなるストレスがたまり、心身に不調が現れる。自分が敵意を持ちやすいと感じたら、日ごろから感謝の言葉をはっきり出すこと、「理想に合う人間が少なすぎる」などの愚痴はやめること、を心がけましょう。
 そのほか、心の専門医を訪れることもお勧めします。話し合いの中で、変化へのきっかけが見つかるかもしれません。

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ガン・脳卒中・心疾患から身を守る9つの生活法


〈Vol. 30〉 ガン・脳卒中・心疾患から身を守る9つの生活法
年の始まりに考える“心と体の健康”

  “一年の計は元旦にあり”と言いますが、新たに計画したこと、目標はありますか? 昨年、健康に不安があった人もなかった人も、新年を機に健康への意識を高めてみませんか。宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんに、心と体の健康を守る方法について伺いました。

 新しい年の始まりに際し、健康で長生きすることを考えるとき、心においては日本古来の考えを取り入れてみてはいかがでしょうか。新年を、原点に戻り新たに出発するときととらえる考えです。あたかも、落葉樹が晩秋に葉を落とし、新たにつぼみから出直すように、心に蓄積した負の残滓(ざんし)を捨て去り、希望の芽を育む始まりとする。この祖先からの知恵は、心において元気を失っている個人をよみがえらせるきっかけになるでしょう。
 しかし身体的には、年を経るごとに機能が衰え、死に近づくのは致し方ありません。我々のできることは衰える速度を可能な限り遅くすることです。

■ ストレスによる免疫力低下も
 現代の3大死因はガン・脳卒中・心疾患となっていますが、元気で長生きする基本はこれらにかかりにくい生活を送ることに尽きます。脳卒中・心疾患の大きな原因として動脈硬化が存在していることは言うまでもありません。その危険因子として、高血圧・高脂血症・喫煙・糖尿病・過酸化物・ストレスなどが挙げられています。一方、ガン発生原因として、口から入るもの…すなわち偏食・喫煙・アルコール・化学物質などが重視され、またストレスによる免疫力の低下も少なからず影響していることも明らかです。
 では3大死因から身を守る生活法とは? 米国国立老化研究所によると

1.野菜・果物を十分とる
2.定期的に運動する
3.禁煙
4.冷気に当たりすぎない

 私の考えも加えると、

5.ファストフードを控える
6.かかりつけ医を持つ
7.安眠のためには妥協しない
8.悩みがあれば相談する
9.自然に触れる機会を増やす、など。

 年末になると、多くの日本人が帰省渋滞を不快に思いながらも故郷を目指します。それは自分の原点である故郷で新たな年を迎えようとする思いがあるように感じます。これを機に、心も体も健やかな一年になるよう、意識してみてください。

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心療内科&婦人科医・上野裕先生にリビングマロニエ編集本部長が聞く 女性が気になる「更年期」と「うつ」


〈特別編〉 心療内科&婦人科医・上野裕先生にリビングマロニエ編集本部長が聞く
女性が気になる「更年期」と「うつ」

 女性の病を、心と体の両面から考える「こころと体の健康をサポート」。今回は特別編として、この1年で特に読者の関心が高かった「更年期障害」と「うつ病」について、うえの医院院長・上野裕さん(写真左)に本紙編集本部長・渡辺慶子(写真右)が聞きました。
更年期障害
渡辺 女性にとって、“いつまでも若々しくいたい”というのは共通の願いだと思います。でも40代くらいになると、“以前より体力がガクンと落ちた”と感じる人が多いようです。これは、女性としての体の機能が衰えてきたためですか?
上野 月経が順調で女性ホルモンが十分出ているなら、体は大丈夫。むしろ、心の疲れの方が問題だと思います。
渡辺 そういえば、子どもが思春期で難しい時期だったり、介護の不安があったり、40代はストレスが多いですね。
上野 本当はストレスの蓄積で心が疲れているのに、体の具合が悪いと思いこむ人が少なくありません。悩みを人に話すだけで心が軽くなるので、まず誰かに相談してほしいと思います。
渡辺 実際に更年期障害に悩む女性は、何歳くらいの方が多いのですか?
上野 50歳前後の女性が多く、閉経前の半年間、閉経後の半年間くらいが一番更年期の症状が現れる時期です。
渡辺 閉経前でも更年期障害と呼ぶんですね! どんな治療があるのですか?
上野 ほてりや手足の冷え、だるさ、寝汗、やる気の低下などが見られる方に、私はホルモン補充療法(HRT)を5年を限度に行います。主に使うのは、飲み薬や貼り薬です。また、どの女性も閉経後数年は子宮内膜がんなどのリスクがあるので、定期的に検査を受けることを勧めています。
渡辺 更年期障害を女性の終わり、と感じて悩む患者さんはいませんか?
上野 そういう悩みが原因で、症状が長びく人もいます。たとえ閉経しても女性であることは変わらない、ということを忘れないでほしいですね。

うつ病
渡辺 更年期障害がきっかけで、“うつ病”になる人も多いと聞きます。うつと気分が落ち込んでいるのとは、どう違うのでしょう。
上野 日常生活に大きな支障がでたら、病気だと思ってください。例えば出勤前にとても憂うつになって会社に行けない、2~3日間家事も何も手につかないなど。他人からは怠けているように見えても、本人はふがいなさで焦りと不安を感じ、常に心が安まらない状態なのです。
渡辺 うつにならないためには?
上野 思いどおりにならなくても自分を責めないこと、孤立していると思いこまず、親しい人に相談することです。
渡辺 最後に、女性がずっと元気で若々しくいる秘けつを教えてください。
上野 音楽や絵など、“一流のもの”にはパワーがあります。自分が一流と感じるものにふれ、力をもらっていれば元気でいられると思いますよ。

話を伺った「うえの医院」の外観。 緑の竹が心を和らげます

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“女性の尿もれ”のメカニズムと治療法


〈Vol. 29〉 心理的に不安定な状態から切迫性失禁になることも
“女性の尿もれ”のメカニズムと治療法

 最近、パンティライナーに尿もれをガードする専用品が発売されたり、テレビ番組でも取り上げられるなど、女性にとって身近な問題と言える“尿もれ”。人には言えない悩み“尿もれ”について、宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんに聞きました。

 8月に行った「アンチエイジングセミナー」でも参加者から“知りたいこと”の一つに挙げられた尿失禁(尿もれ)。閉経まで十分に間のある女性でも悩んでいる方が多いようです。女性の尿道は太く短いので、男性よりも失禁しやすいのですが、もう少し詳しく触れてみましょう。
 尿失禁とは、咳やクシャミによって起こる腹圧性失禁と、尿意を催すと我慢できずにもれてしまう切迫性失禁の2つに分類されます。腹圧性失禁は、尿道を支える筋肉が老化や出産の影響で弛緩(しかん)することが主な原因と考えられ、第一の治療法は骨盤底筋訓練法で、薬剤療法は補助的なものに過ぎません。症状が強い場合、泌尿器科あるいは婦人科専門医による手術や、尿道を狭めるコラーゲン注入法を行います。

■ 尿意を感じると、我慢できない
 切迫性失禁については、過活動膀胱(ぼうこう)の一つの症状ととらえるのが最近の考え方です。過活動膀胱とは、尿意切迫感を中心とする病態で、頻尿・睡眠を中断させる尿意を伴うことが多く、その極端例を切迫性失禁とみています。すなわち、尿意を感じるやいなや我慢できずにもれてしまう場合が切迫性失禁なのです。脳・脊髄の異常、膀胱・尿道に関する異常によることもありますが、多くは原因が特定されない失禁です。心理的に不安定な状態におかれている方に、切迫性失禁を訴える例が多いように感じます。
 まず行うべき治療法は薬剤によるものです。膀胱の動きを抑制する抗コリン剤を3カ月間服用することで、約6割は改善がみられます。ただし、根本的解決には至りませんので、服用を続けなくてはなりません。
 そのほか、尿意を我慢することを訓練する方法もあります。薬剤を服用しながら、少しずつ排尿間隔を我慢して延ばしていくやり方です。水分やカフェインの過剰摂取をやめることが必要とする意見もあります。
 これらの治療法を行っても改善のないときは、精神心理的な側面からの診察をお勧めします。

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“やせたい願望”“ストレス”が引き起こす拒食や過食


〈Vol. 28〉 “やせたい願望”“ストレス”が引き起こす拒食や過食
思春期以降の若い女性に多い摂食障害

  “やせたい”や“食べたい”は多くの女性が持つ欲求。しかし、それが過度になると、食べることに対して異変が起きます。今、思春期の女性に多いという拒食や過食。そんな「摂食障害」について、宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんに伺いました。

 思春期以降の若い女性に多い、摂食に関する異常を摂食障害と呼び、それは拒食タイプと過食タイプに分けられます。どちらも、第二次大戦後の欧米に増え、近年は日本でも普通に見られるようになってきました。
 拒食タイプとは、体重が標準より15%下回り、その原因が脂肪・糖分を極端に減らす、下剤の乱用・過度の運動など自己の意志によるものです。そして、肥満への恐怖を抱き、極めて低い理想体重を設定。無排卵が続くのが典型です。成因については、脳内セロトニンとの関連性を指摘する向きもありますが、摂食障害に対する素因をもつ人が精神心理的な負荷を受け、摂食中枢に異常が起こるため、と言われています。
 制限型拒食タイプ(過食を伴わない)の患者さんに接していると、決まってムンクの「思春期」に描かれた少女を思い出します。不安に満ち、思い詰めて未来を見すえるような表情。同様に彼女たちも、自分の未来に絶望的な不安を抱き、未来を恐れているように感じられるのです。若さゆえの不安・恐れ。それは具体的・日常的な物事に対するのではなく、直感的かつ内省的な性格からくるもの。こうした純粋拒食タイプには、未来を幅広く考えられるようなきっかけを提供するのが理想的です。

■ 多いのは過食を伴う摂食障害
 多くの拒食タイプは過食を伴うようになります。“やせ願望”と“摂食本能”との葛藤(かっとう)とも考えられますが、この段階になると薬剤による治療が有効な例が出てきます。
 現在に多く見受けられる摂食障害は、過食を主とするタイプです。この場合は、心的外傷や日常的なストレスが主因であることが多く、薬剤療法と精神心理療法の併用が効果的です。薬剤ではSSRI剤(抗うつ剤)がよく使用されます。また、集団で行う対人関係療法=グループ療法の中で、心の切り替えに気付くこともあります。 
 摂食障害は心の不調が体にも影響するので、心療内科を受診することをお勧めします。

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男女を問わず悩んでいる人が多い脱毛・薄毛


〈Vol. 27〉 心理的ストレスが新しい髪の成長を損なう
男女を問わず悩んでいる人が多い脱毛・薄毛

 このところ、男性だけでなく女性用の育毛剤や髪の毛にボリュームをもたせるウィッグのコマーシャルが目立つようになりました。現代人にとって大きな問題の脱毛・薄毛について、原因や対処法を宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんに伺いました。

 脱毛・薄毛と言えば一般には男性の悩みと思われていますが、先日「アンチエイジングカレッジ」の講演で、女性にも同様の悩みを抱えている方が多いと知りました。
 男性に脱毛症が多い原因は、男性ホルモンが毛髪の成長を妨げるためと考えられており、加齢とともに頭頂部・前頭部を中心に髪が薄くなっていきます。
 一方、女性も男性の10分の1程度の男性ホルモンを分泌しており、閉経前後=更年期に女性ホルモンが激減すると男性ホルモン作用が現れ、毛髪に悪影響を与え始めます(女性壮年期脱毛症と呼びます)。
 頭皮全体にわたって抜け毛・細毛が増え地肌が見えるようになるのが女性型の特徴です。脱毛の進行には心理的ストレスの程度(更年期に心理的ストレスにさらされ易い)も大きく影響しています。心理的ストレスをうまく処理できないでいると、末梢循環に不調が起こり、他種類の身体症状を表すことがあります。もし、男性ホルモンの影響で頭皮の血液循環量が減った状態が続けば、抜けた髪を補う新たな髪の成長が損なわれ、薄毛を深刻化させます。

■ 男性は内服薬、女性には塗布薬
 男性型脱毛症の治療薬では、昨年12月に発売された内服薬「ファナステリド」(商品名・プロペシア)があります。男性ホルモンの暗躍を抑えることで効果を発揮させるもので、服用には医師による診察が必要です。
 女性に適応する内服用育毛剤は今のところなく、頭皮塗布剤が脱毛症対策の基本となります。その一つ、ミノキシジルには女性用もあります。頭皮血行を改善して育毛を促すのですが、血圧降下作用もあるため医師と相談しながら使用してください。生薬では、桂皮(けいひ)・生姜(しょうが)・薬用人参・センブリ入りの塗布薬が育毛効果が高いようです。食べ物では、ニンニク・トウガラシ・コショウ・レモンは毛髪に悪影響を与えるので、控えてください。
 また、男女とも心理的ストレスは脱毛・薄毛に影響してくるので、心療内科の受診を勧めます。

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ストレスが原因のさまざまな疾病


〈Vol. 26〉 社会生活上の人間関係が主な要因に
ストレスが原因のさまざまな疾病

  “こころと体の健康”というコラムのテーマに沿っていながら、これまで取り上げていなかった「ストレス」。なじみのある言葉だけに“病”と考えない人も多いのでは。今回はストレスが体に及ぼす影響について、宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんに伺いました。

 精神心理的なストレスが、心に対してだけではなく体にも悪影響を及ぼすことは、よく知られる通りです。しかし、具体的にどんな症状となるのか、どのような疾病と関連するのか、疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。
 生きるということは、安定した身体機能を維持することと、危険が迫ったときにその危険から身を守ること、この2つを満たし続けることです。現代においては、社会生活上での人間関係が、最多で深刻な危険因子=ストレスとなっていると考えられます。
 人が何かの危険にさらされたとき、するどく反応する交感神経(自律神経のひとつ)は、人間関係が不快だと認識したときにも同じく反応します。そうした状態が長く続くと、もう一つの自律神経・副交感神経(身体機能安定をはかるもの)との協調にほころびが生じ、「自律神経失調症」と呼ばれる病態に陥ることがあります。症状例として、疲れ・首や肩のこり・眼精疲労・頭痛・息苦しさ・のどの違和感・めまい・吐き気・下痢などが挙げられます。

■ 体だけでなく心理的なケアも
 またストレスは、免疫・内分泌代謝機能を乱し、多くの身体疾患を発生、悪化させる一因ともなります。高血圧症・慢性胃炎・気管支喘息・アレルギー性皮膚炎・腰痛症・神経性頻尿・顎関節症など、ストレスの影響が強い疾患は、心に対する診療をおろそかにしないために「心身症」と呼ばれる場合があります。同じ高血圧でも、病院で白衣を見ると血圧が上がるという人には、血圧を下げるだけではなく、心理的な安定を図る処方も必要だからです。
 では、ストレスの影響を受けにくくするには、どうしたらよいのでしょう。精神医学者・福西勇夫さんは、こう言います。

1.ストレスに積極的に立ち向かう
2.人生での満足度を高くする
3.周囲の人から強いサポートを受ける

 それでもストレスに負けていると感じたら、心療内科を受診してください。

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変化のある時期に起こる男性の更年期障害


〈Vol. 25〉 8つのチェック項目、思い当たるのはいくつありますか?
変化のある時期に起こる男性の更年期障害

 最近、ご主人の様子が変だと感じたことはありませんか? 女性なら年齢を考え、更年期障害で診察を受ける方も多いようですが、男性の更年期障害はまだ一般に認知されてはいないよう。宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんに男性の更年期障害について伺いました。

 最近、更年期障害に対する関心が高まり、男性の更年期にも注意が向きつつあるように感じます。加齢・ストレスなどによる男性ホルモン・副腎皮質ホルモンの低下を主因と考える研究者が多いようです。
 40代後半以降の男性が性欲・勃起力の低下を覚えるとき、以下のチェックをアメリカ・セントルイス大学のモーリー博士は勧めます。

1.元気がなくなってきた
2.集中力の低下
3.身長が低くなった
4.生きる喜びの低下
5.憂うつな感じがしやすい
6.歩く力の減退
7.眠気が出やすい
8.仕事の能率が上がらない。

の8つで、3つ以上あてはまる場合、更年期障害の恐れがあると言いいます。女性と違い、劇的に変化があるわけではなく、症状は神経症と似ていますが、これまで2日~3日で改善していた不調が長引いたり、性欲の低下が見られる場合は、男性更年期障害を疑ってもよいと考えます。

■ 夫婦の関係が快方への鍵
 更年期を迎える人の多くは、定年・進学や結婚のための子の独立などで夫婦間の環境に大きな変化の起きる時期に症状が出ます。換言すれば、夫婦が向き合う時間が増える時期です。妻側からは「今までは自分のペースで過ごせたのに、夫がずっと家にいるため、外出もままならない」という声も聞こえてきます。そんな折、夫が1~8に示した状態に陥っていたら、夫に対するうっとうしさが増し、ひどい場合は家庭内別居・熟年離婚への道をたどることも。
 そんな悲劇を防ぐには、まず結婚式当日を思い出すことです。その日、二人は永遠の愛を誓ったはず。そうです。結婚とは契約なのです。二人で積み重ねた時の重みをかみしめてください。そうすると、夫への接し方が変わってきます。そして、更年期障害について理解し、夫にやさしく診療を勧めるべきです。ホルモン補充・抗精神剤・漢方薬などによる治療を通じて心身にゆとりが生じ、2人の関係にも温かさが戻るはずです。

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心も体も重くなる梅雨のストレスを解消


〈Vol. 24〉 日本の暮らしを支えた独特の気候
心も体も重くなる梅雨のストレスを解消

 洗濯ものは乾かないし、家の中に湿気がこもり、臭いが気になる。外に出ると雨に濡れてぐちゃぐちゃ…。そんな嫌な季節を迎え、不快な思いが募っていませんか。宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんに、心が重くなりがちな梅雨の過ごし方を聞きました。

 灰色の雲から雨が落ちてくる日が続くと、知らず知らずに気分が沈み、体も重くなります。心の不調が悪化しやすい時期は2つあり、その一つが5月から6月にかけて。大型連休が過ぎてしまったせいもありますが、梅雨という独特な気候こそ主因だと感じます。心身の健康を保つには、この時期をどう過ごしたらよいか考えてみましょう。
 冬の日照不足による心身の不調を治療するために開発された光療法の原理から考えると、梅雨どきは努めて部屋を明るく保つこと、好みのハーブ類の芳香で部屋を満たすことも心を楽しくさせるでしょう。湿気は胃腸の動きを悪くしがちなので、炭水化物・脂質を減らし、薄味で消化のよいものを多くとり、お酒は醸造酒よりも蒸留酒をお勧めします。
 さらに、体を普段より清潔に保ち、女性は美容室、男性は理容室を多めに訪れることをお勧めします。すがすがしさは頭からという訳です。また、梅雨どきは思いのほか寒暖の差があるので、風邪にも注意が必要です。学生の方は、低下しがちな集中力を高めるため、できるだけ得意科目を優先して勉強してください。

■ 漢方薬で気の流れをスムーズに
 もし心が梅雨に寛容になれば、その独特の気候こそ水と緑に象徴される日本人の暮らしを支えてきたものだと思うゆとりも生まれます。しかし、体はすぐに梅雨というストレスに適応できるとは限りません。そんなときは漢方薬が役立ちます。気象ストレスと心身の相関については、中国医学が西洋医学を断然リードしており、湿気や沈む心が蕫気﨟の流れを阻害し、湿気の局所停滞が心身に不調を発生させると捉えます。その不調には、蕫気﨟の流れを順調にする理気薬(りきやく)と湿気の停滞を解消する化湿薬(かしつやく)を組み合わせて対処します。
 心の中で太陽に再会したいときには、モーツアルト「ピアノ・ソナタ15番」の第1楽章をお聴きください。無量の光に全身が染まるでしょう。それでも心が晴れないときには、心療内科を受診してください。

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子育ての終わりと更年期が重なる心の変調


〈Vol. 23〉 ホルモン療法と漢方薬で症状が改善
子育ての終わりと更年期が重なる心の変調

 男性が定年退職で「燃え尽き症候群」になるように、子どもを持つお母さんにとって“子育てを終えること”は大きな変化。この春、巣立つ子どもを見送ったお母さん、心や体に不調はありませんか? 宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんに、その対処法を伺いました。

大切に育ててきた子どもたちが進学・就職などで家を離れ、心に空洞を抱えて過ごしている人(特に女性)が少なくないと思います。こうした年代は、いわゆる更年期と重なってしまう場合が多々あります。家庭生活の変化が原因の心の変調…憂うつ感、イライラ、気力の低下、不安感などに、更年期の不快症状である肩こり、腰痛、頭痛、不眠、のぼせ、自汗などが加わると日常生活に大きな支障をきたします。

 48歳から52歳の間に閉経(排卵の停止)をむかえる女性が9割で、閉経の前後1年間くらいを更年期と考えます。この期間に前述した不快症状が現れる場合を、更年期障害と呼びます。第一の原因は卵胞ホルモンの欠乏にあり、ホルモンを補充することで症状の緩和が期待できます。また、ホルモン療法には骨粗しょう症の予防・治療効果もあります。ただし、乳がん・子宮体がんに対するチェックが必要です。

■ 芸術や文化を楽しむ余裕を持つ
 ホルモン療法でも軽快しない更年期症状には、漢方薬を使います。冷え性傾向の人には、五積散(ごしゃくさん)・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)・温経湯(うんけいとう)などから選択。ほてるタイプの人には桃核承気湯(とうかくじょうきとう)・加味逍遥散(かみしょうようさん)などを選びます。
 閉経したことや生活変化への適応不全が主因となる精神心理症状については、対処する基本は身体的・社会的変化を受け入れ、その変化を前進的にとらえること。子育てのエネルギーを自らの世界を広めることに費やしたり、毎月の月経にまつわるうっとうしさから開放されたと感じることが大切です。
 人類の歴史が生んだ芸術や文化。“それらを味わい、楽しむ余裕ができた時期”と、更年期と巣立ちをとらえてみてはいかがでしょうか。具体的な行動として、江戸や明治の歴史を念頭に都内を歩く、欧米の一流楽団でブラームスを聞くなどをお勧めします。症状が長引くときは、婦人科や心療内科医に相談してください。

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タイプに分かれる新環境への適応法


〈Vol. 22〉 入学・就職・転勤・異動など変化があった人へ
タイプに分かれる新環境への適応法

 4月は入学・就職・転勤・異動など社会生活に大きな変化がある時期。新しい環境に進んだ人は、期待感とともに少なからず心に不安も起きているはず。そこで宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんに“新環境になじむ方法”について伺いました。

 “新環境になじむ=適応する”とは、新たな学業や仕事をこなせるようになることと、新たな対人関係に自分をうまく溶け込ませること、の2つに尽きると言えるでしょう。前者に関しては、それまでに培った自分の能力を基礎に日々努力を重ねていくことで適応していくわけですが、問題なのは後者。すなわち新たな上司・同僚・部下・級友との対人関係に適応できるか否かと感じます。
 精神科医の和田秀樹さん、水島広子さんの著作を参考にして、この問題を考えます。
 どのような場合に人間関係をうまく築けない可能性が高いのか? それは自分が苦労性・引っ込み思案であり、対する相手が頑固・自信過剰・自己中心的なタイプである場合です。

■ 苦労性と引っ込み思案の対人関係
 苦労性の人は自分が嫌われること・みんなの輪に入れないことをとても怖がります。そういう自分の前に自信過剰・自己中心的な人が立ちはだかると、苦労性の人は「とてもこの相手には好かれない・こんな人が中心にいる仲間には入れてもらえない」と早合点し、自分の殻に閉じこもってしまいがちです。こうしたタイプの方へは、自分と自分以外のみんなという対立軸で見るのではなく、周囲の人々を分析し、自分対Aさん・自分対Bさん…という風に一対一で対人関係をとらえる。その中で気の合う人との関係を築き、うまが合わない人とは距離を置くようアドバイスしています。また自分を過大に評価する傾向をもっている引っ込み思案の方へは、自分を特別な人間と見ず、自分の言動が評価されないで当たり前と思って、人と接するようアドバイスしています。
 新たな環境に不安を感じ、過去の環境を理想化しやすいのが人の常です。しかし、変化・変遷を求める心が人間を地球の至るところに存在させ、ほかの天体にさえ人足を残させた原動力なのです。新しい環境は、新たな可能性への出発ととらえてみてください。
 それでも悩みが解決しないようなら、心療内科医に相談してください。

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攻撃性を持った思春期の子どもたち


〈Vol. 21〉 反抗期とは違う、仮想世界への執着
攻撃性を持った思春期の子どもたち

 「脳内汚染」。脳神経学者で医療少年院の勤務医の岡田尊司さんが、ゲームやインターネットに興じる子どもたちへ警告を送るこの本が、ベストセラーとなっています。宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんに“現代の思春期”について伺いました。

 子どもから大人への移行期は思春期という美しい言葉で呼ばれ、中学から高校時代がまさにその期間に当たります。第二次成長が明らかになってくることで、子ども時代から決別を促され、また自己への関心が増し、その自己を過大、あるいは過小に評価しがちな傾向にある時期です。
 こうしたときは不安定になりやすく、不安・抑うつ、反抗的態度(反抗期)が出現する傾向にありますが、明らかな暴力・自己破滅行動にまで発展することはまれです。ところが最近、少年少女が起こす残酷な事件が増えています。
 「大きな要因は、テレビ・テレビゲーム・インターネットへの依存」と「脳内汚染」の著者・岡田尊司さんは言っています。仮想世界に埋没する子どもたちは、自然や隣人との接触をわずらわしく感じるようになってしまいます。そして、映像媒体での暴力的シーンに影響され、他者へ攻撃的になったとき、子どもたちが標的にしやすいのが、隣人である家族や級友なのです。

■ 子どもからのサインとは?
 では、家族はどうしたらそのサインに気付けるのか。日常生活に根ざした不安や不機嫌なら反抗期と考えてよいと思います。ところが仮想世界へ執着し、家族・友人との付き合いなどの現実的なことを面倒がる、社会への無関心、などは注意が必要です。
 私たちが子どものころは自然を感じとる静けさがありました。風や雨の音、夕焼けの彩り、夏の夜の深さ…それらを感じながら遊び、勉強し、心が広がったのです。
 小さいお子さんをお持ちのご両親には、自然とともにある時間を増やす、歴史が育んだ言葉で語る、という2つに取り組んでいただきたいと思います。
 また、思春期のお子さんをお持ちなら、自分が自然や歴史、そして社会の一員であると感じさせることが大切です。心療内科では、その第一歩としてカウンセリングを行っています。もし、お子さんの何らかのサインに気付いたら、心療内科に相談してください。

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携帯、買い物、どうしても止められない! これって依存症なの?


〈Vol. 20〉 いつも携帯電話チラチラ、お金がないのに買い物してしまう
どうしても止められない! これって依存症なの?

  あなたのストレス解消法はなんですか? お酒、たばこ、買い物やギャンブルなど、さまざまでしょう。一度で終わるはずのストレス解消が、習慣化し、やめられなくなってしまう。そんな“依存”について宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんに聞きました。

 たばこ・お酒などの嗜好(しこう)が強い、ブランド物をついつい買ってしまう、インターネット・携帯電話がいつも気になる。こんな状態が続くと「私は依存症ではないか」と心配になり、相談に訪れる方がいます。
 病的な依存状態、「依存症」とは“強い関心と嗜癖(しへき)を抱く対象自体、あるいは対象を獲得する代価が、当人の社会生活を崩壊させ、当人や家族に不利益をもたらす領域に陥った場合”だと私は考えています。例えば、アルコールの多量摂取により肝機能に異常が、また脳機能の衰退が起こって日常生活に支障が生じた時などです。
 この疾病の研究で著名な医師・斉藤学さんは依存症の特徴として、強迫性・衝動性・反復性・どん欲性の4つを挙げています。依存が病的なものか否かを判断する場合、特に強迫性とどん欲性の程度が重要視されます。

■ “買い物の女王”が語る依存
 依存の対象については、大きく次の3つに分類されます。

1. 物質(アルコール・たばこ・コーヒー・薬物など)
2. 人間関係(セックス・家族など)
3. 行動様式(買い物・パソコン・ゲーム・宗教・ギャンブルなど)

 中村うさぎさんという作家がいますが、彼女は“買い物の女王”などと言われる有名な浪費家です。自らを買い物依存症と診断し、「何千万円というお金をかけて買ったブランド物を、家の中でゴミとしてしまった女」とも説明しています。著書「愚者の道」は、心理学や哲学の視点からも読み応えのある名書ですが、依存が気になる人が読むと、胸につかえていたものが、少なからず排泄されるのではないかと思います。彼女は言います。「破滅へのリビドー(欲動)が浪費を促し、経済的破滅へと追い立ててきたのだ」と。それとともに、現実からの強い逃避欲動が依存を病的なまでに深刻化させている、と私は考えます。
 依存症の治療に関しては、薬剤が効果的なこともありますが、同じ悩みをもつ集団でのグループ療法が最も有効です。

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周囲からは気づきにくい“鬱(うつ)症”


〈Vol. 19〉 女性の月経周期にも関連している症状
周囲からは気づきにくい“鬱(うつ)症”

 「軽くウツ入ってて」などと普段の会話でも使われるようになってきた蕫鬱﨟という言葉。感情の起伏なのか、病気なのかは自分ではなかなか判断できないもの。そんな疑問を持つ方々に、宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんが答えてくれました。

 「周囲から“元気で明るい人ね”とよく言われますが、実際には憂うつな時が結構あるのです。私は躁鬱(そううつ)症じゃないでしょうか?」という質問を複数の方から受けました。しかしそのような場合、少なくとも躁的な状態にはないと思われます。本当の躁的状態は、とても高圧的である・大きな声でしゃべる・自慢ばかりする・身勝手に振る舞うなど、他人に迷惑をかける行動を繰り返します。褒められることなどなく、むしろ周囲から人が遠ざかって行ってしまいます。注意すべきことは、躁鬱症か否かではなく、鬱症か否かであると考えます。
 人間は外向的と内向的な二つのタイプに分けられます。主観的な判断を基本とする内向タイプの人が鬱的になった場合、他人の目をあまり気にかけませんから、鬱が外に現れやすく、周囲の人に比較的早く異常を発見されます。しかし、客観的な既成事実を重要視する外向タイプの人が鬱的に陥った場合、人の目を気にし、他者の前では努めて鬱を隠そうとしがちなので、周囲からは鬱とは見えにくく、一人で悩み続けることが往々にしてあるのです。

■ 悩み続ける前にセルフチェック
 同じような心配を抱いている方には、次のような点をチェックしていただきたいと思います。

1. 寝付きはよいか・眠りは浅くないか
2. 食欲・性欲の低下があるか
3. 気力・集中力の低下はないか
4. 好きだったことが楽しく感じられているか
5. 怒りっぽくないか

 これらに関し、以前と異なる状態が起きているときは、鬱的になっている恐れがあるので、医師に相談してください。
 また女性の場合、月経周期に関連して鬱的になることがあるので、注意が必要です。特に月経の一週間前から月経までの間に鬱的になることが多いのですが、月経開始と共に鬱が消え去れば、鬱症ではないでしょう。こうした状態を“プチ更年期”と名付ける人もいますが、更年期とは全く違いますので、安心してください。

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受験会場で“あがらない”ためには?


〈Vol. 18〉 「急性ストレス反応」に似た受験生のストレス
受験会場で“あがらない”ためには?

 受験は時に「戦争」などと形容されるほど激しく、受験生にとって大きなプレッシャーとなるものです。そんな中で、自分の力を出せるか出せないかは大きな鍵。宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんに「受験会場で実力を出す方法」について伺いました。

 12月は受験生にとっては追い込みモードへと転換を図る時期となり、「ここ一番という試験場であがらず、いつもの力を出せるようにするにはどうすれば良いか」という質問が、受験生の親から発せられます。
 そこで、“あがる”ということを考えてみましょう。その根本には“不安”があると考えます。学力面での不安、また「試験前夜に眠れなかったら」「風邪をひいてしまったら」「大雪だったらどうしよう」という不安。そうした不安にさいなまれ続けて余裕を失う上に、初めての試験場で大勢の受験生に囲まれるのですから、不安がピークに達するのは当然です。一方で合格への焦燥が増す…。それらが複合すると、受験生にとって強烈なストレスとなり、「急性ストレス反応」と呼ばれる病態に似た状態に陥ることがあります。ひどく“あがってしまった”状態で、動悸・手の震え・口渇(こうかつ)・吐き気・息苦しさ・集中困難・注意の狭まり・記憶の脱落などが出現します。これでは、とても試験には立ち向かえません。

■ 不安を軽減するさまざまな方法
 どうしたら“あがる”ことを防げるか?最も重要なことは不安を軽減することです。まず、学力に関する不安を和らげる方法として、

(1) 志望校の過去問題をできるだけたくさん解いて、傾向を頭に焼き付ける。実際の試験の際、親近感を抱き、リラックスして問題を解けるでしょう。
(2) 過去の模試などの成績で良かった時だけを思い、悪かったものは封印する。
(3) 試験直前まで勉強を続ける。勉強が最良の安定剤なのです。
(4) 自分が落ちた姿も合格した姿もどちらも想像しない。

 ほかに、友達を受験仲間と思い、不安を打ち明ける。宿泊は心地の良い宿にする。女性は月経に関する不安を婦人科医に相談するなども有効です。それでも心配ならば、受験1週間前から精神安定作用を持つ漢方薬を服用すること、また試験開始直前に肩の力を緩め、目を閉じて眉間の部分にしばし意識を集中させることをお勧めします。

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カウンセリングにどんなことを期待しますか?


〈Vol. 17〉 患者さん自身の行動が大切
カウンセリングにどんなことを期待しますか?

 以前から、このコラムで心の病の治療法として出てきた“カウンセリング”。どんなことをするのか、どれほど効果があるのかは、あまり知る機会がなかったのではないでしょうか。宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんに“カウンセリング”について伺いました。

 「私はカウンセリングを期待して心療内科に来たのに、全くやってくれず、ガッカリした」と、ときどき言われます。患者さん側と医師側の、カウンセリングに対する思いの違いから発生するひとコマです。
 両者の違いは、あたかも世間に言う“占い”と、中国の“易経”の差のように思えます。占い師が相談者の未来を条件付きで規定する占いは、いわば他力本願です。易経は、その時点での相談者の傾向を暗示し、それをもとに自らが未来を選択するのです。
 多くの患者さんが期待するカウンセリングは占いと似ています。静かな部屋内のゆったりとしたイスに座って、自分の過去から現在までを語り、それをもとに医師は心につきまとうストレスをあぶり出し、しかるべき方法でストレスを消し去る。あるいは、心に不調が生じやすい性格を変えてくれる│という課程を心療内科の診察だと考え、カウンセリングと感じているようです。

■ 心を開放する魔法ではありません
 一方、医師がカウンセリングという言葉を使う場合、一つは治療を進める上での方針を決める際に患者さんと相談することを、もう一つは精神療法の一部を指します。しかしそれは、多くの方が期待しているような一瞬にして心を開放する魔法ではありません。心の不調の源が、正しくない認知性にあればそれを修正する、対人関係のつたなさにあるならばそれがうまくなるようなプログラムを提供する。そこからは、患者さんの行動が主となります。自らが主体とならねば成果は期待できません。
 ほかにも、同様の苦しみを持つ複数の患者さんがお互いの体験などを語り合う“グループ診療”や、患者さんの語りを共感しながら傾聴することを主とするカウンセリングもあります。
 医師が誠意をもって患者さんの話を聞くことこそ、心の診療のアルファ(最初)であり、オメガ(最後)であることは永遠の真実です。心の不調に悩んでいる方は心の医師を訪れ、語り合っていただきたいと思います。

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うつ病は子どもでもかかるの?


〈Vol. 16〉 イライラしたり、元気のない子どもが増えています
うつ病は子どもでもかかるの?

 今、子どもの成人病が増加していると問題視されています。しかし、これまで大人だけのものと言われていた病に子どもがかかる例は、身体的なものだけではないようです。宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんに“子どものうつ病”について伺いました。

 先日、「最近、うちの子が食欲も元気もなく、ぼんやりしていることが多くて、学校も休みがちです。子どもにもうつ病はあるのでしょうか?」という問い合わせがありました。答えは、「子どもでもうつ病にかかる」です。当院でも時々、親御さんが心身の不調をもった中学生のお子さんを伴い、診療にいらっしゃいます。その中には、明らかに“うつ”と診断される場合があります。
 精神心理学者の和田秀樹さんは「1976年以降に生まれた日本人には、うつ型人間が少ない」と述べていますが、興味深い話です。医師・傳田健三さんの著書「子どものうつ病」の内容と合わせて、見解を述べてみましょう。

■ 騒がしすぎる環境が原因では?
 成人では神経症(社会環境からのストレスが原因)の一つとして、うつが起こることが多いのですが、17歳以下の場合、素因が主であるうつが多いと考えられます。
 症状は、大好きだったことに興味が持てなくなった、友達と遊ばなくなった、ボーッとしている、勉強に集中できない、忘れ物が多くなった、成績が落ちる、学校を休みがちになる、気持ちが暗く沈む、悲しいなどの精神心理の異常。また、イライラや不安、不機嫌が現れることも。身体的には、不眠、過眠、食欲低下、便秘、吐き気、だるさ、頭痛、自汗、動悸、肩こりなど実に多彩です。
 本の中で傳田さんは「子どものうつは増えていると感じる」と述べています。なぜか? 私は、少数派のうつ型人間にとって、現在の日本は騒がしすぎるのではないかと推測します。テレビから流れる音楽・言葉、教室内、街角、どこもかしこも騒がしすぎて、心が休まるときがなく、疲れ果ててしまうのです。
 現在、「抗うつ薬は18歳未満には可能な限り投与しない」という意見が優勢で、医師によりさまざまな治療を行っています。当院では漢方薬を中心に処方し、精神心理的なアドバイスをしています。もし、お子さんにうつ的症状が見られたら、ためらわずに心療内科を受診させてください。

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疲れは体の異常を訴える警報


〈Vol. 15〉 夏の不快さによるダメージがツケとなって現れる9月
疲れは体の異常を訴える警報

 最近「疲れた」と感じて、家で一日中ゴロゴロしたり、マッサージを受けたけど、なかなかだるさが取れないということはありませんか? 宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんに、“疲れ”のメカニズムと、効果的で簡単な対処法を伺いました。

 9月に入ってから“疲れ”を訴え来院する患者さんが目立つように思います。長く、蒸し暑い夏がもたらした浅い眠り、食欲不振、運動不足、冷房の浴びすぎ、冷飲料過摂取などが、多少とも涼しくなった9月にツケとなって現れたようです。
 “疲労=疲れ”とは、肉体の酷使、精神的ストレス、睡眠不足に対する生理的で重要な反応なのです。厚生労働省の「疲労に関する研究班」は「疲れは、身体の異常を教え、何らかの対応をせよと考えさせてくれる、大切な警報」と述べています。そして、その疲れを最初に感じる場所は、神経症やうつ病の発生と深く関連するホルモンによって働きが調整される大脳前頭皮質・ブロードマン10野だと言っています。すなわち、「脳内での疲労が回復しなければ、体をいたわるだけでは疲労は完全には回復しない」ということです。

■ 緑や音楽が疲労回復に役立つ
 では、どんなことをしたら脳の疲労を回復できるのでしょうか。前述した研究班は蕫緑の香り﨟を浴びることを一番に推奨しています。森や林に身をゆだね、緑の香りを満喫したときの心地よさは、誰しも経験済みでしょう。音楽を聴くことも脳疲労の回復に役立つ、と私は確信しています。例えば、ワーグナー「ジークフリート牧歌」、ドボルザーク「アメリカ」、ボロディン「弦楽四重奏第2番」、ヴォーン・ウィリアムス「ひばりが昇っていく」など。
 反対に疲労が続いてしまうと、身体的な症状が加わる場合があります。具体的には、微熱、咽頭痛、筋肉痛、頭痛、羞明(しゅうめい)、下痢、腹痛といったもの。さらには、もの忘れ、睡眠障害、イライラ、不安感などの精神・心理的症状も出現する場合もあります。
 また、心臓疾患や糖尿病、悪性腫瘍などの重大な疾病が原因で疲労を感じる場合もあります。十分な睡眠、健康的な食事、心のリラックス、適切な仕事量、ストレスの少ない環境への移動を心がけても疲労が回復しない時は、躊躇(ちゅうちょ)なく医師の診察を受けてください。

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「対人恐怖症」と呼ばれていた「社会恐怖症」とは?


〈Vol. 14〉 「対人恐怖症」と呼ばれていた「社会恐怖症」とは?
毎日の生活にあるコミュニケーションへの不安や恐怖

 授業で人前に出て発表する、PTAなどで大勢の人や初めての人に会う、というのは誰でも少なからず緊張するもの。しかし、それが恐怖感となって社会生活に支障をきたす「社会恐怖症」が増えているとか。宇都宮市大寛町のうえの医院院長・上野裕さんに伺いました。

 「他人の視線を受けると気になって仕方がない」という人が、15歳前後の男性で45%、女性では60%もいるというデータがあります。それが、20歳代後半以降では10%に急降下するそうです。
 しかし、他人の視線を強く意識し続け、日常生活に支障をきたす「社会恐怖症」と診断される人もいます。以前は「対人恐怖症」と言われていたこの疾患について説明しましょう。

1) 他人に紹介される
2) 皆の注目を浴びている
3) 自分にとって重要な人物や目上の人に会う
4) 少人数で会話する

 これらに際し、激しく緊張・恐怖した結果、

1) 心拍数が跳ね上がる
2) 顔面が真っ赤になる
3) 口やのどがカラカラに渇く
4) 手が震える

 などの状態になる。患者自身、自らの恐怖・緊張が過剰反応で合理的ではないと分かっています。しかし、人と接する場になると、このような状態に陥ってしまう。そして、低く自己評価し、他人の批判・哄笑(こうしょう)を恐れて、コミュニケーションを回避しようと考えるのです。

■ 思春期に多く、中年でかかる人も
 多くの場合、思春期前半までに発症しますが、中年になって初めてかかる人もいます。また、女性は男性の2倍かかりやすいと言われます。
 原因は、医学的には、恐怖感をコントロールする大脳の一部に問題が生じる、あるいは内分泌的不調。心理学的には、他人の行動とその結果を悲観的に見てしまうことで、人と接することの難しさが深層に植え付けられた、と考えられています。私は「無意識に感じる自分へのこだわりと、それを他人には知られたくないという遠慮深さの矛盾が、原因の一つである」と考えます。
 治療は、森田療法・認知行動療法といった精神療法と、神経症治療薬や安定剤による薬剤療法が多く用いられます。また、疾患の性質上、対人関係を重視したグループ療法が今後の治療法として期待されています。自分やお子さんに思い当たる症状があるようなら、専門医を受診してください。

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夏の暑さによる心と体の症状を改善


〈Vol. 13〉 女性の体のサイクルにかかわるうつや不安感
夏の暑さによる心と体の症状を改善

 排卵や月経など、体調の変化が激しい女性にとって、夏の暑さは嫌なもの。さらに、うつや睡眠障害など、心の不調が重なって、更年期障害を疑う人も多いとか。宇都宮市大寛町のうえの医院・上野裕さんに夏に多い女性特有の症状について聞きました。

 月経は、12歳ごろから始まり、だいたいが48歳~52歳の間で終わります。この間、順調に脳内から排卵ホルモンが分泌されれば、28日~30日おきに1個が排卵され、妊娠しなければ排卵後14日ごろに出血。これが月経です。月経開始から排卵までは体温が低温期で、排卵から月経までは高温期。基礎体温(BBT)を記録すると、排卵が順調に続いているか判断することができます。
 婦人科にはよく、月経が1週間経っても止まらない、10日も経ってないのに再び月経になったなどの症状で来院する方がいます。こうした異常は無排卵が原因であり、出血=月経というわけではありません。ほかにも、高温期になると心身共に調子が悪くなる、排卵がない、あるいは少なくて妊娠できない、排卵痛や月経痛に苦しむなど、排卵に関する女性の悩みはたくさんあります。特に蒸し暑い夏の不快感が脳内の不調を生み、ホルモン分泌を乱して排卵を止めたり、月経痛や高温期の症状をより耐え難くします。

■ 20人~30人に1人が心理症状も
 これらの身体的症状と、心理・精神的症状を同時に抱えている方は多く、20人~30人に1人の割合といいます。例えば無月経に、情緒不安定・憂うつ感・集中力低下・眠気・不安感など。また、30代で月経が順調にある方が、心身に不快が起き「私は更年期障害ではないでしょうか」と来院したという極端な例もあります。月経の異常に関しては婦人科での診療が最適ですが、女性特有の症状であっても、精神・心理的な症状が加わっているなら、婦人科以外に精神科や心療内科に相談することをお勧めします。
 現在では、男女共同参画というあり方が少しずつ広がり始めましたが、女性の排卵をめぐる生物学的なハンディを可能な限り小さくしていくのも医師の大きな役割だと考えます。私は漢方薬の力を大いに利用していますが、各医師が独自の方法で、不快感を改善する夏の暑さ対策を考えています。心と体に不快を感じたら、医師に相談してください。

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悩み・ストレス・環境などから発症する「不眠症」


〈Vol. 12〉 寝付きが悪い・何度も目が覚める・眠りが浅い症状の睡眠障害
悩み・ストレス・環境などから発症する「不眠症」

 一日の果てに訪れる心の静寂。ささやかな満足感に包まれながら睡眠が始まり、翌朝爽やかに目覚める。当たり前のように感じるこの“睡眠”が原因で、つらい毎日を送っている人がいます。その「不眠症」について、宇都宮市大寛町のうえの医院・上野裕さんに伺いました。

 最も多い睡眠障害である不眠症には、
(1) 寝付きが悪い
(2) 何度も目が覚めてしまう
(3) 熟睡した感じが乏しい・眠りが浅い

 という3種類の訴えがあります。どうして眠れなくなるのか。原因は、室温・室内の静けさ・寝具などの環境がもたらすもの。日常生活におけるストレスが主因の場合(精神生理的不眠)。神経症・精神病の一症状。そのほか、原因を特定できないもの(特発性不眠)があります。これらの中で、一般的に不眠症と言われるのが、精神生理的不眠と特発性不眠の2つです。
 不眠症に悩んでいても、不眠ぐらい自分で治すべきだと考え、アルコールの力に頼ったり、薬局などで購入した睡眠薬を服用する方や、睡眠剤に対する警戒心から医療機関を受診しない方が少なくありません。しかし、精神生理的不眠と特発性不眠では治療薬剤が違いますし、神経症による不眠では神経症に対する治療も必要になります。さらに、アルコールに頼ると不眠を悪化させる危険性が強く、中毒へと進む恐れもあるので、医師の診療が不可欠なのです。
 睡眠剤の危険性については、医師の指示通りに服用すれば、依存症に陥る可能性や、休薬後のリバウンドの心配も極めて低いと言えます。

■ 眠れなければ眠らなくていい
 不眠が続き、眠れないことで悩むようなら、以下の対処法を試してみてください。
(1) 日中の眠気で困らなければ、睡眠時間は気にしない
(2) 眠くなるまで床につかない
(3) 毎日同じ時刻に起床する
(4) 昼寝は午後3時より前の20分間にする
(5) 眠りが浅いときは、遅寝早起きをする

 中には、不眠が続くと体が弱り、命に危険が迫るのでは、と考える方がいますが、人間の体は崩れる前に自然に眠るようにできているので、その心配はありません。しかし、不眠が原因で心理的にも身体的にもつらい症状が続き、日常生活に影響を及ぼすようなら、きちんと医師の診察を受けてください。

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わかっているのに、止められない「強迫神経症」


〈Vol. 11〉 わかっているのに、止められない「強迫神経症」
不安や恐れの悪循環が日常生活を困難に

 “こうなっちゃったらどうしよう”と、悪い方向へ考えてしまう最悪シミュレーション。最悪な事態に備えるためならいいけれど、不安から日常生活が送れなくなることも。宇都宮市大寛町のうえの医院・上野裕さんに「強迫神経症」について聞きました。

 最近、「強迫症」に関し、2人の方から相談を受けました。1人は「鍵をかけて外出したつもりでいても、家から離れると本当に鍵をかけたかどうか心配になる」。もう1人は「小学校に入学したばかりの長男が、学校でちゃんと勉強しているか、ちゃんと給食を食べたか心配で仕方がない」。どちらも、「こんな風に考えてしまう自分は強迫症なのか?」というもの。
 蕫強迫﨟とは精神心理学的に、無意味または不合理と思われる考え、行動が支配的となっている状態と説明されます。つまり、考えまいとしていても、何度も何度も思い浮かび、頭から離れない。前者がそうです。
 誰でも強迫観念に襲われることはあります。その強迫観念による不安や苦痛を打ち消すために、同じこと(強迫行為)を繰り返し、日常生活に支障が起きた場合を「強迫神経症」(専門的には強迫性障害)と呼びます。汚れてしまうことを恐れて、何度も何度も手を洗ったり、公衆電話や電車のつり革が使えなくなる。いつも決まった場所に整理整とんされているかが気になり、仕事が手に付かなくなる。自分でも無意味だとわかっていて、止めたいと思っているのに、止められないのです。

■ リズムを合わせる訓練を
 強迫神経症の方を診ていますと、不安・抑うつ神経症の方よりも、性格的な要因が強いように感じます。「世界の中で自分だけ心理的に孤立しており、世界の波長やリズムに自分のリズムが合わない」。強迫症に悩む人々は、自分のリズムに不本意ながらも執着し、自らも無意味だと思える行動を繰り返しているように感じ取れてなりません。
 まずは、医師の診察やカウンセリングを受けてください。さまざまな治療法があり、医師が有効な治療法を選んでくれます。また、川の流れや波の音に心をゆだねる、リズム感にあふれる短歌や俳句を口ずさむ、しなやかなリズムを持つ音楽を心に刻むなど、自身でも、世界のリズムと自分のそれが交歓して生きられるような時を持ってみてください。

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この時期にかかりやすい「適応障害」を防ぐ


〈Vol. 10〉 この時期にかかりやすい「適応障害」を防ぐ
新しい環境を楽しむために必要なのは?

 4月から新しい環境でがんばり始めて、少し疲れを感じてきてはいませんか? 年齢や性別にかかわらず、今の時期に悩む人が多いのが「適応障害」。そこで宇都宮市大寛町のうえの医院・上野裕さんが、新しい環境にうまく適応する方法をアドバイスしてくれました。

 4月は環境の変化を多く体験する月です。それまでの環境を離れ、新たな世界へ旅立つ。格好良く聞こえますが、変わる本人にとっては喜ばしいことばかりとは限りません。新入学生・社員が「勉強・仕事についていけるだろうか」「良い先生・上司に当たるだろうか」「周囲からイジメを受けないか」など考えて、憂うつになる。遠い場所への転勤は、親にも子にも大きな不安をもたらす。幸運であるはずの昇進も、うれしさより苦痛を感じる。このような状態が長く続くと、神経症と呼ぶべき状態に陥ってしまうことがあります。

■ 2人の博士が提案する適応法
 どうしたら新しい環境に適応しやすいか?
 まず、米国の医学博士・エイメンさんの認知行動療法的発想に基づいた提案を紹介しましょう。

(1) 悪いことだけに注意を向けず、良い部分やメリットを中心に考える
(2) ~するべきことだ、~しなくては、と考えずに、~したい、~することは良いことだと考える
(3) 相手が何も言っていないのに、自分に悪い感情を抱いていると決めつけない

 次に周囲との協調性を考えることに関して、当院の医師・水島広子著「自分でできる対人関係療法」から引用します。

(1) できるだけ蕫言葉﨟で伝えたほうがよい
(2) 間接的な言葉は誤解のもとになりやすい
(3) 勝手に納得しないこと
(4) 相手はわかっているはずだと思いこまないこと

 生きるとは、時々刻々に変化する自分の心身を時々刻々に変化する環境に適応させていく、とも言えます。事実をそのまま受け入れ、変化する自己と環境を楽しむこと。
 もし、自分一人の力でできない場合は、周りの人に相談してください。それでも、不安や抑うつ状態が長く続いたり、体調に変化がある場合は、心療内科を受診してください。以前にも書きましたが、「うつは心の風邪」と言われるほど、多くの人がかかり、治療をすることで治る病気です。カウンセリングや漢方も含めた薬の力を借りて、本来持っている適応力を強めていきましょう。

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神経症の一つである“ペットロス症候群”


〈Vol. 9〉 神経症の一つである“ペットロス症候群”
大切なものを失ってしまった悲しみと苦しみ

 犬や猫と一緒に住める家や泊まれる宿、学校まで、ペット関連商品が人気の今。ペットとの触れ合いで癒される人が多い一方、ペットの死を迎えて、悲しみから抜け出せない人も。最近よく耳にするペットロスについて、宇都宮市大寛町のうえの医院・上野裕さんに伺いました。

 米国の精神科医・ホルムスは、人生におけるさまざまな出来事のストレス度を数値に示しています。それによれば、最も大きなストレスは配偶者との死別で、値は100。離婚が73、家族の死と拘禁が63、病気とけがが53、結婚50、失職47と続きます。すなわち、大切なものを失うこと(ロス)が、最も大きなストレスになると言うのです。夫や妻を失った人や、子どもを失った親の深い悲しみは誰もが共有できるものでしょう。問題は、愛着度に個人差があるものを失った悲しみの場合です。
 例えば、愛がん動物(最近ではペット)を失ったことで嘆き・苦しむ人に「たかがペットのことで大げさ過ぎないか」と、慰めよりも軽べつに近いまなざしを向けること。これは、その人をさらに追いつめてしまいます。人は悲しみ・苦しみの中で孤立してしまうと、抑うつと無気力にとらわれがちです。ペットロス症候群がこの状態です。不安の時代において、ペットを愛情と依存の対象とし、そのペットを失って悲哀を経験する方が増えています。それに伴い、ペットロス症候群という言葉を聞く機会が増えてきました。

■ モーツァルトも劇中で主張
 歌劇「フィガロの結婚」の第4幕冒頭で、バルバリーナという少女が「ピンをなくしてしまった」と、悲しみの小アリアを歌う場面があります。ここに流れる音楽は、劇中で最も暗く、人の深淵に潜んでいる無限の悲しみを堪えています。物語ではいわく付きの蕫ピン﨟なのですが「器物をなくすことによってさえ、人間は普遍的な悲しみの極みを味わってしまう可能性があるのだ」とモーツァルトが主張しているように私は感じられます。
 ペットを失うことは、ある人にとってストレス指数100にもなります。犬や猫と生き物同士として接してみると、彼らを人間同様の、それ以上に親愛なる存在と思える時が訪れるかもしれません。ペットロス症候群は決して特殊な病態ではなく、喪失を原因とする神経症の一つなので、独りで悩まずに医師に相談してみてください。

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原因は同じで主症状が違う、2つの神経症


〈Vol. 8〉 原因は同じで主症状が違う、2つの神経症
ストレスが“不安”と“うつ”を作り出す

  少し前までサラリーマンが「ストレスで胃に穴が開いちゃったよ」と言うのが定番だったストレスの病。今や多くの女性や子どもの心をむしばんでいます。前回に続き、ストレスが原因の「不安神経症」について、宇都宮市大寛町のうえの医院・上野裕さんに聞きました。

 前回の「うつ的神経症」を読んで、「私もうつ病にかかっていると思うのですが」と相談にこられた方が何人かいました。その中に、「不安神経症」という診断名がより妥当とされる例があり、患者さんに伝えたところ、うつ的神経症と不安神経症の違いについて質問を受けました。
 「不安神経症」の症状は、心が安まらない感じ、強い疲労感、集中力の低下、イライラ、頭痛、肩のこり、不眠、どうき・息切れ、消化器症状など。これらの多くは「うつ的神経症」の症状と共通しており、「不安神経症」に抑うつ気分が加われば、おそらく診断は「うつ的神経症」となるでしょう。いや、神経症のうちで、心が安まらない感じが強ければ「不安神経症」、抑うつが強ければ「うつ的神経症」と呼ぶ、というべきでしょうか。
 2つの神経症の背景には同じく、脳内でのセロトニンとノルアドレナリンというホルモンの代謝に異常が起きていることがわかっています。すなわち、病理的な原因は同じで、症状の現れ方に違いがあるということです。

■ 身近な人に話すことが予防に
 前回、「うつ的神経症」の原因はストレスだと書きましたが、ストレスをうまく処理できなかったり、心の奥にため込んでしまうと、不安が生じます。ひどくなると、ある人は不安が強く出て「不安神経症」になり、ある人は不安と共に落ち込みが現れ「うつ的神経症」になります。
 不安とは、“開放できないストレス”と表現できるかもしれません。軽いストレスは人の生活を向上させるよい刺激ですが、強すぎる、また長引くストレスは人を不健康な状態に陥れます。ストレスが不安を生み、さらにうつを招くのです。
 軽い不安が生じたとき、それをどう解消するかが神経症の予防と考えます。しかし現代は、むしろ不安をあおるような環境ばかり。不安を感じたら、まず身近な人に打ち明けることです。それでも解消しない場合、または相談できる相手がいない場合は、早めに専門医に相談してください。

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不快な日常生活がもたらす、うつ的神経症


〈Vol. 7〉 20人に1人が当てはまると診断される
不快な日常生活がもたらす、うつ的神経症

 「病は気から」とは蕫病気は心のもちようで重くも軽くもなる﨟ことですが、現代は、本当に病は気(ストレス)からかかることが多いそう。そこで、宇都宮市大寛町のうえの医院・上野裕さんにストレスが原因のうつ的神経症について聞きました。
 精神心理的な異常や不調には、大きく分けて2種類あります。1つは、現実世界とかけ離れた精神心理状態が基本となる病的状態。統合失調症と精神症状を伴う重症のうつ病が典型的です。2つ目は、いわゆる神経症と呼ばれている状態で、原因の多くは日常生活の中にある不快なストレスによると考えられます。
 今回は後者のうつ的神経症(学会では、気分障害・うつ病エピソードと呼ばれる)について説明します。心療外来を訪れる半数以上にこの診断が当てはまります。ある統計では日本でも20人に1人はこの診断が当てはまると述べています。
 症状は、
(1) 憂うつと悲しみが心に広がり落ち込む
(2) 興味をもてるものが無くなり、行動を起こす気力が低下する
(3) 他人との接触が面倒になり、外出が苦痛になる
(4) 決断力と集中力が無くなる
(5) 不眠・頭痛・けん怠・食欲や性欲の減退・どうきなどの身体的症状
(6) 心が疲れているのにイライラ・不安がつきまとう、という6つに大別されます。

■ 家庭内トラブルや人間関係から
 ストレスの発生源は、家庭内のトラブル、職場・学校内でのあつれき・オーバーワーク、友人・隣人間でのかっとうなど。そして、それらは患者さんの体と心を日夜苦しめているのです。最近の研究で、ストレスが心を順調に保つ脳内ホルモンの活動を悪くしていることが判明し、神経症の一つの原因と考えられるようになっています。
 理想的な治療法は、ストレスの源から自由になることです。しかし、現実にはとても難しいことなので、部分的な自由を得ることで妥協せざるを得ません。具体的には、職場・学校を一定期間休むこと。家族や友人、周囲の人との関係を改善するために、認知行動療法や対人関係療法のカウンセリングを受けることなどです。
 しかし、現段階では薬剤による治療が中心となっています。ストレスで活動が悪くなった脳内ホルモンを正常に戻す薬剤に、不安を鎮める安定剤と不眠に対する睡眠薬が加わります。こうした組み合わせで、多くの患者さんの症状は軽快・治癒し、薬剤を服用しないで日常生活を支障なく送れるようになります。
 ストレスが解決できないほど大きくなる前に、少しでも早く医師に相談してください。

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心と体の曲がりかど“更年期”を快適に


〈Vol. 6〉 中国医学の力を借り、心に目を向けて
心と体の曲がりかど“更年期”を快適に

 今年大ブームとなった“冬ソナ”。ヨン様に心をときめかせたり、ロケ地めぐりをするという行動は、実は、更年期を迎えた女性にはいい効果があるそう。多くの女性が悩む更年期について、宇都宮市大寛町のうえの医院・上野裕さんに聞きました。

 閉経前後からの数年間、さまざまな症状で苦しむ方がいます。まず、のぼせ・ほてり・自汗・動悸などの血管運動の異常。次に、しびれ・腰痛・肩こり、という知覚系の異常。あるいは、外陰部・泌尿器系統の異常もあります。また、めまい・耳鳴り・頭痛・不眠・憂うつ感・不安などの精神神経的な異常。
 こうした状態を“更年期障害”と呼びます。主な原因は、卵巣機能低下による女性ホルモン不足。それならば、女性ホルモンを補うことで改善されると考えますが、そう簡単にはいきません。
 1つには副作用の問題。最近、米国の調査で、乳がん・心発作・脳卒中の増加などの副作用を無視出来ないことがわかりました。ですから、ホルモン治療を受ける時は、医師と良く話し合うことが大切です。2つめは、ホルモンを補っても症状の改善が見られない例があること。その場合、抗不安薬・鎮痛剤などを併用しますが、それでも良くならない方もいます。

■ 熱中できる何かを探すこと
 では、どうしたら良いか? 私は中国医学的考え方による治療をお勧めします。中国伝統医学では、更年期症状を老化現象によるものと月経停止によるものの、2つの原因からと考えます。老化が原因の方には、ホルモン剤が良く効くでしょう。しかし、月経血が体内に残り、末しょうの血流に乱れが生じて症状が出ている場合は、漢方薬が力を発揮します。
 また、更年期症状は多かれ少なかれ精神心理的な側面を抱えています。閉経で女性らしさが無くなったと思う寂しさ・子どもの巣立ち時期と重なっての寂しさ・夫の定年などによる生活の変化、などが心にのしかかる。心の空白。これが症状を悪化させています。
 こう考えると更年期は、体についてはもちろん、心にとっても曲がり角であると言えるでしょう。その期間を快適に過ごすには、まず“熱中できる何か”を探してみてください。ヨン様にときめいたり、ご主人と一緒にできる趣味を見つけるのもいいでしょう。
 それでも症状に苦しむ場合は、医師に相談してください。婦人科的な診察ばかりではなく、中国医学的、そして心に向けての診療を受けることで、更年期を快適に過ごすことができると思います。

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産後半年以内に多く発病する深刻な現代病


〈Vol. 5〉 産後半年以内に多く発病する深刻な現代病
10人に1人がかかっている“産後うつ病”

 「子どもは産む前よりも、産んだあとのほうが大変よ」と出産経験者はよく言います。実は、これには身体的な大変さ以上の深い意味も込められているのです。今、さまざまなメディアで特集が組まれるほど、問題視されている“産後うつ病”について、宇都宮市大寛町のうえの医院・上野裕さんに聞きました。

 出生数が減り続けているのと反比例するように、妊娠した女性の出産することへの関心と要望は、年々高まっています。そうした思いを受け、産科施設ではさまざまな出産方法を提示したり、陣痛から出産までの苦痛を小さくしようとする取り組みがなされています。出産そのものに対する、心と体に対するケアは、以前に比べて格段に向上していると言えます。
 しかし、出産後のケアについては、十分な配慮がなされているでしょうか。残念ながら、過去と同じレベルでしかないのが現状です。おまけに、核家族が増えている現在、お母さんと子どもが孤立してしまう状況で、誰にも相談できないまま、育児にうまく適応できずに苦しんでいるお母さんが増えています。
 初産婦の80%くらいは、出産の2・3日後から、気分の落ち込み・イライラ・不安・不眠などの不調を感じることがあります。これを“ベイビー・ブルース”と呼びますが、多くは1週間以内に自然に治ってしまいます。けれども、そうした不調が長引いたり、出産後しばらくしてから、より重い心身の不調(産科的以外に)が発生する場合があります。これが産後うつ病です。

■ 自分と子どもを傷つける前に
 これは10人に1人という割合で、誰もがかかる可能性のある現代病、と言えます。子育てのストレスが過労を生み、さらに、“子どもをちゃんと育ててこそ立派な母親”という考え方に追いつめられて、脳の活動が低下し、うつ的になってしまうのです。
 子育てに不安やつらさを感じたら、なるべく外に出ることと、自分の時間を持つこと。そして夫や周りの人に、自分のつらさを話し、協力してもらうことです。子育て中のお母さんを支援する、さまざまな団体を利用するのもいいでしょう。
 放っておくと、自分や子どもを傷つけたりする危険性もあり、自分一人では対処が難しいので、なるべく早い段階で受診することをお勧めします。

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20代~40代の女性のほとんどが悩む「月経前症候群」 “我慢することが当たり前”の毎月の症状を快適に


〈Vol. 4〉 20代~40代の女性のほとんどが悩む「月経前症候群」
“我慢することが当たり前”の毎月の症状を快適に

 眠い・体が重い・イライラするなど、月経前の不快なシグナル蕫月経前症候群﨟。「毎月のことだし、生理が始まれば治るから」と我慢している人が多いのでは? しかし、今は子育てや仕事で忙しい女性が多い時代。毎月のことだからこそ我慢せずに快適に過ごしてほしいと、宇都宮市大寛町のうえの医院・上野裕さんは提唱しています。

 私は産婦人科の専門医でもある心療内科医なのですが、日本の月経前症候群の研究はアメリカに比べて遅れていると感じます。それは、日本にまだ「月経前の不調は病気ではない」という考え方が残っているからです。
 しかし現在、20代後半~40代前半の女性の7~8割の人に何らかの軽い症状が、2~3割の人には日常生活に支障がでるほどの症状が見られます。その中でも、全体の5%~10%の人はかなり重い症状を持ち、月経前に自殺者が多いというデータもあるほど、注目すべき病気です。
 身体的な症状は、腹部膨満感(お腹の張り)・頭痛・便秘・下痢・乳房の痛み・足や顔のむくみ・吐き気・ニキビ。心理的には、イライラ・興奮しやすくなる・不安・集中力の低下・うつ的状態・抑うつ気分・性欲の低下など。ひどくなると、心身不調のため、日常生活が破たんしてしまうこともあります。

■ 生活習慣や漢方薬などで改善
 原因として考えられるのが、周りの人間関係などの社会的なもの、脳内ホルモンのバランスがくずれることによる生物学的なもの、ストレスなどの心理学的なもの。
 例えば、核家族のお母さんは家事と子育てで忙しく、症状が出ていても休むことができないでしょう。仕事を持つ女性は、社会的な立場や周りからの抑えつけから症状が強くなる。妊娠回数が減り、月経回数が増えていることも要因だと考えられます。
 症状の改善には、日ごろからエクササイズなどのリズミカルな運動をする、食事は糖分や塩分を減らしてうす味にする、コーヒーやアルコールを控えて果物や野菜を十分に採ることが大切です。治療は主に漢方薬やホルモン剤が使われ、症状がひどい場合には排卵を止めたり、安定剤などを投与することもあります。
 これからは女性がもっと社会で活躍する時代となります。我慢せずに、気軽に医師に相談してください。

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現代の良き母は、自分を楽しむことができる人


〈Vol. 3〉 子育て中のお母さんのための心療内科
現代の良き母は、自分を楽しむことができる人

 今、子育て中のお母さんで「心療内科」を受診する人が増えています。子育てに悩んだり、精神的に不安定になり、医師に助けを求めにいく。そんなお母さんたちには、育った環境にかかわらず、ある共通の考え方が植え付けられているのだと、宇都宮市大寛町のうえの医院・上野裕さんは言います。

 治療にくる子育て中のお母さんに、私はまずこんな質問をします。

 ・ 子どもがどう育つかは、父親より長く接している母親の責任が大きい
 ・ 子育て中もこれまでと変わりなく、家事は女性がやるものだ
 ・ 子どもや夫が元気でいられるように気を遣うのは妻の役目だ

 ほぼ全員が「はい」と答えます。では、これらができなかった場合はどうなると思いますか? 
 例えば、赤ちゃんの夜泣きがひどく、何をやっても泣きやまない。夫には「明日仕事なのに眠れない」と怒られる。幼児期になると、習い事をさせてみたが、高い月謝を払っているのに上達せず、ほかの子に差を付けられていると焦る。
 このように子どもを持つお母さんには、マタニティーブルーを含め、子育て中のさまざまな出来事から、うつ的傾向が見られることが多いのです。涙もろくなったり、無力感、疲労感、不眠、食欲不振、集中力・記憶力の減少など。ひどくなると、不安やイライラ感から子どもを傷つけてしまうのではないかと思ってしまうことさえあります。そして、そんな自分を責めてしまうのです。

■ 子どもは子ども、自分は自分
 そんなお母さんたちに共通しているのは、昔から唱えられてきた“良妻賢母であれ”という考え方です。時代や家族の形態は変化しているのに、根強く残っている“女性らしさ”の追求。しかし、良き母であるため「3歳までは子どもと一緒に過ごしたほうがいい」と社会復帰を諦めたお母さんが、「世間に置いて行かれる気がする」と不安になり、一番身近で弱い子どもにあたってしまう。それでは本末転倒です。
 育児にストレスを感じたら、子どもを預けて友達と食事に行くなど、自らが楽しむことです。「子どもがすべて」という考え方から、「自分は自分、子どもは子ども」とある時は距離を置く。それが、子どもの自立にもつながります。
 それでもストレスを発散できない場合は、医師に相談してください。

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環境の変化で心が疲れていませんか?


〈Vol. 2〉 子育て中のお母さんや働く女性のストレスをケアする「心療内科」
環境の変化で心が疲れていませんか?

 毎日、少しでもホッとする時間はありますか? 今日誰かに、自分の思ったことを話しましたか? 実はそんな小さなことがとても重要。子どもの誕生や入学、就職、昇進など、新しい環境を迎えた人のストレスが症状に現れるのが3カ月前後。今、「心療内科」を受診する人が増えていると、宇都宮市大寛町のうえの医院・上野裕さんは言います。

■ 能力とのギャップと人間関係
 環境の変化に伴い、心や体にさまざまな症状が現れることを「適応障害」と言います。原因は、新しい環境と自分の能力にギャップやプレッシャーを感じて起きてしまう場合と、人間関係になじめずに起きてしまう場合の2つに分かれます。
 女性に関して言えば、子育てを始めたお母さんは、一日中子どもの相手をして、夜ご主人が帰ってきても相手をしてくれず、報われない気持ちになる。ご主人の転勤で引っ越した場合は、近所付き合いもなく閉じこもってしまう。また、働いている方は、職場が変わって周りの人や職種と合わず、抑うつ状態になってしまう場合があります。

■ 真面目な人がかかりやすい
 夜寝るときには抑うつ状態でも、朝起きると回復していたり、家族や友達に話してストレスを発散できれば、問題ありません。「適応障害」にかかる人の多くは、責任感が強く、真面目な完ぺき主義で、「身近な人にも弱みを見せられない」と一人で抱え込んでしまうのです。
 もし、症状が1~2週間も続いてしまうようなら、心療内科に相談してください。必要なのは、第一に休養、医師やカウンセラーとのカウンセリング、漢方も含めた薬です。今や「うつは心の風邪」と言われるほど、多くの人がかかるもの。治療をすれば、予想以上に早く改善する人もいます。“治せる病気”なんだと理解してください。

こころの症状 からだの症状
やる気がでない
興奮する・イライラする
なんとなく落ち込んでいる
何をするのも面倒でおっくう
興味や関心がわかない
集中力がなくなる
涙もろくなる
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心も体も健やかに 求められる心療内科


〈Vol. 1〉 ストレスを感じることが多い今、20代・30代の患者さんが増えています
心も体も健やかに 求められる心療内科

 アニマルセラピーや、アロマテラピー、カラーセラピーなど蕫癒しブーム﨟と言える現代。このブームは、変化が激しい社会にストレスを感じ、「何かに癒されたい」「前向きな気持ちになりたい」とSOSを発信している表れなのかもしれません。そんな中、注目されているのが、心と体のストレスを癒す「心療内科」。宇都宮市大寛町のうえの医院・上野裕さんに「心療内科」について連載で伺っていきます。

■ 心療内科とは?
 ひと言で言うと「初めから心身両面に注意を向けて診療する科」。軽い精神科だと思っている方も多いのですが、内科です。心と体は密接な関係を持ち、身体的な不調を治す場合に、心理的なケアまで踏み込まないと治療効果が上げにくい場合があります。
 また、心理的な疾患には、体の不調を伴う場合も多いのです。心と体のどちらの心配ごとでも、相談できるのが心療内科だと思ってもいいかもしれません。

■ どういう患者さんが多いの?
 20代~30代の女性が多いですね。気分が落ち込む、やる気が起こらない、イライラする、不安感が強い、眠れないなどの状態が長く続いたり、極端な例だとパニック障害や摂食障害などになる方もいます。更年期障害で相談にくる方も多いです。
 また、頭痛や嘔吐、呼吸困難、下痢など身体的な症状が出ているのに、内科で検査して「悪いところはありません」と言われ、心療内科を受診する方もいます。
 軽い鬱(うつ)状態の人も増えています。放っておくと生活に大きな支障となることもありますが、優れた治療も開発されているので、早めに受診することを勧めます。

■ どんな治療をするの?
 “心の治療”とは格好のよい言葉ですが、神経学的・内分泌学的にも、心の働きの本質理解にはもう少し時間がかかるようです。
 では、どんな治療をするのかと言うと、患者さんの訴えを丁寧に聞き取り、カウンセリングする心理療法。心の安定化ホルモン分泌を順調にする薬剤や、中国医学を用いた漢方製剤を処方する薬物療法を用いています。  心や体に心配ごとがあったら、気軽に心療内科に相談してください。

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