こどもの病気
獨協医科大学小児科教授 杉田憲一のコラムです
第15回 こどもの救急疾患
正月になると、多くの病院、診療所が休みになってしまいます。そのため、通常時より受診しにくくなります。その結果、様子を見てしまい手遅れになることもあります。今回、熱、けいれん、呼吸困難などヘの対応の仕方、すぐに病院を受診すべきという症状について述べます。
基本的には、眠れない、食欲がない、不機嫌の症状があったら重い病気と考えましょう。
[発熱]
生後4か月未満の赤ちゃんの熱、前日よりも熱が高くなっている、また元気でも5日目になっても解熱する様子がないなどは要注意です。なお、発熱は1日のうちでも変化します。最も高い値で判断しましょう。
[嘔吐・下痢]
症状が強い(短時間のうちに回数が極めて多い)、吐いているものが緑色をしているとか下痢に血液が混じっている。重い脱水の症状としては、泣いても涙が出ない、排尿がない、おなかに何もなくなるのでへこんでいるのが普通なのにおなかが張っている。食中毒をはじめとした急性胃腸炎、腸重積などがあります。
[けいれん・ひきつけ]
生後6カ月未満の痙攣(けいれん)、初めての痙攣、5分以上の痙攣または短くても何回も繰り返す、熱がないのに痙攣、6歳以上の痙攣などです。特に初めての場合は、あわててしまう症状の1つです。過去に痙攣があった場合でも、時に髄膜炎などのこともあります。心配のときは医療機関に問い合わせてください。インフルエンザ脳症も要注意です。また、痙攣予防の座薬もうまく使うと効果的です。
[咳]
横になるとひどくなり眠れない、声がかすれたような咳をしている、呼吸にあわせて胸やおなかが動いている。喉頭(蓋)炎(一部は仮性クループ)、乳幼児の細気管支炎、気管支喘息などが代表的な病気です。
[その他]
頭部打撲では意識がない、痙攣している、鼻血がでている。また、やけどやもちなどの誤飲にも気をつけましょう。
昼間のうちの受診を原則としますが、以上に述べたような症状(病気)があったら、一部には救急車の必要な場合も含めて時間外でも早めに受診しましょう。以前から症状があった場合には、正月などに備えて相談しておくべきと思います。
第14回 ロタウイルス、ノロウイルス感染症
細菌、ウイルス、寄生虫などの感染によって、嘔吐(おうと)、下痢などを示す代表的な病気が「感染性胃腸炎」です。今回は、冬に多いノロウイルスとロタウイルス感染症について述べます。下痢、嘔吐が主な症状です。通常、ロタウイルスに感染した乳幼児では、脱水症による入院が必要なことがしばしばあり注意が必要です。食事がとれず、尿の出も悪くなった時は要注意です。
ノロウイルスは冬の早い時期に感染し、そのあと1月ころからはロタウイルスの感染が始まるのが普通です。
ロタウイルスは6カ月から2歳以下の乳幼児に多くみられ、5歳までにほとんどの小児が経験します。これに対して、ノロウイルスは幅広い年齢層に罹(り)患します。感染経路は、患者の便や吐ぶつから人の手などを介して、ヒトからヒトへ飛沫感染、汚染した食品を食べてなどがあります。
感染から発症までの時間は24時間~48時間です。症状は、いずれのウイルスも吐き気、嘔吐、下痢、腹痛と発熱です。また、感染しても発症しない場合や軽い風邪のような症状だけの人もいます。
ロタウイルスによる胃腸炎では白色の下痢便が特徴で、以前は仮性コレラとも言われていました。3日から8日程度続きます。特に乳幼児では脱水症状に気をつける必要があります。まれですが、けいれんを認めることもあります。これに反して、年長児や成人では感染しても発症しない場合が多くみられます。
この2つのウイルスには、有効な抗ウイルス剤はありません。脱水症状を起こしたり、体力を消耗したりしないように、水分と栄養の補給を十分に行う必要があります。脱水症状がひどい場合には輸液(ゆえき/点滴のようなもの)を行う必要があります。下痢止め薬は効果がありません。
予防は、食品はしっかり加熱し、汚染した調理器具、おもちゃ、衣類、タオルなどからの感染を防止する必要があります。消毒には次亜塩素酸ナトリウムが有効で、アルコールや逆性石鹸は効果がないとされています。また、ウイルスは下痢等の症状がなくなっても、1週間程度は排泄が続くので要注意です。
アメリカなどではロタウイルスワクチンが子どもの定期予防接種に加わりましたが、日本ではワクチンは行われていません。ノロウイルスに対する有効なワクチンは、まだ開発されていません。
第13回 グリーフケア
大切な人との死別の場合、人は悲しみ「悲嘆(グリーフ)」を感じ、長期に特別な精神の状態を経験する。しかし、人はこの悲嘆のプロセス「グリーフワーク」を経て、やがてこれを乗り越えて、故人のいない環境に適応していく。この「グリーフワーク」のプロセスを支えて見守ることが「グリーフケア」といいます。
医療の進歩によって、子どもの病気の多くは治癒するようになっていますが、事故などによる子どもの死は少なからずあります。グリーフワークの経過は通常以下の様です。①ぼうぜんとし、何事も手につかない時期。②死を現実として十分に受けとめられない時期。③死を受け止めることができた時期。この時期には、生前にしてやれなかったこと、あるいは自分が死の原因を作ったのではないかなどの気持ちがみられることも。④乗り越えて、新たな自分、新たな社会関係を築いていく時期。個人差はありますが、子どもの死の場合は2年~5年とされています。
病的なグリーフワークは 10%~15%に見られるとされ、専門医によるカウンセリングや薬物療法などが必要になることもあります。
グリーフケアの基本的な考え方は、悲嘆のさまざまな感情を正常なものとして認め受けとめます。「お気持ちは良く分かります」や「残されたお子さんのためにも頑張って」ではなく、「さぞかしつらいでしょうね」という言葉が適当かも。
時に、悲嘆が大きい場合、子どものことを喋りたくない、といった気持ちが現れます。しかし、いつまでも避けていると、「グリーフワーク」は進みません。少しずつでも、悲嘆を表現することが必要です。その方法としては、詩を書くとか、子どもに手紙を書いてみるといったことも効果的とされています。また、「グリーフケア」を目的とした会などに参加し、経験者に話を聞いてもらうことも効果的です。私たちの病院では、小児がんで亡くなった人たち自らがこのような会を立ち上げました。全国には、すでにいくつかあります。
この悲嘆は、兄弟にもいえます。、年齢によっても現れる反応は違い、大人には理解しにくいこともあるとされています。今回は死別について述べましたが、子どもにとってこのような別れは、離婚などにも当たります。
第12回 ピロリ菌感染症
ヘリコバクター・ピロリ菌は約30年前にオーストラリア人により発見されました。小児の感染率は5%〜15%程度であり、感染率は年々減少してきています。小児では5歳ごろまでが感染の高い時期です。感染のときにはなんの症状もありません。家族から感染することがふつうで、特に母から子への感染が多いとされています。感染経路は良くわかっていませんが、口から口、ないしは糞便から口です。
ピロリ菌によって起こる小児にみられる疾患には、
1.胃・十二指腸潰瘍…十二指腸潰瘍の約80%、胃潰瘍の約40%に菌が証明されます。治療は除菌療法がまず第一の選択です。
2.慢性胃炎…発症に菌がかかわっていることは明らかになっています。しかし、慢性胃炎と腹部症状との関連ははっきりしていません。したがって、除菌治療は、その必要があるかどうかをよく検討してからになります。
3.鉄欠乏性貧血…10歳以降の鉄欠乏性貧血で、鉄剤の投与で改善しても、すぐに再発する場合の約60%〜70%がこの菌によるものです。このような場合、除菌が成功すると再発を認めなくなります。小児の鉄欠乏性貧血は、鉄の摂取不足、消化管出血、成長に伴う鉄需要の増加があり、その次に多いのがピロリ菌によるものとされています。ピロリ菌にとって、鉄は生命の維持・菌の増殖に必須の元素とされています。すなわち、ピロリ菌は、鉄を巧みに利用し、胃で生息しているとされています。
4.慢性の特発性血小板減少性紫斑病…ピロリ菌が原因。成人に比較して小児では少ないが、通常の治療がうまくいかないときには考慮する必要も。
除菌療法…潰瘍治療剤(プロトンポンプ阻害剤)と2種類の抗生物質(アモキシシリン、クラリスロマイシン)の3剤を併用した治療をします。投与期間は7日〜14日間の治療で、70%〜80%の除菌率が期待できます。
診断法等はかかりつけの先生にご相談ください。
第11回 夏風邪
夏、ふつう10歳以下の小児に発症する代表的な感染症について紹介します。いずれも特別の治療法はありませんが、ひきつけや無菌性髄膜炎で入院が必要なこともあります。今年の手足口病はその頻度が多いとも言われています。
[ プール熱 ]
プール熱は俗称で、正式には「咽頭結膜熱」です。原因はアデノウイルスの感染です。夏に、プールを介して感染が拡がることが多かったのでこの名前がついています。飛沫感染ですが、プールでの結膜や口からの感染も考えられています。
症状は、発熱、のどの痛みなどです。血液検査では細菌感染症との区別が困難なことがあります。しかし、アデノウイルス迅速診断検査で、適切に診断されるようになっています。発熱は3日〜5日、解熱後2日は隔離が必要です。
[ 手足口病 ]
手のひら、足の裏、口の中の発疹が特徴です。1週間程度で自然に治ります。コクサッキーウイルス、エンテロウイルスなどが原因です。発疹の特徴は、中に水を持った小さな発疹です。口の発疹は、水疱が破れて、潰瘍状になることもあり、痛みもあります。皮膚の発疹は、手のひらと足の裏の発疹で、かゆみや痛みを伴わないのが普通です。複数のウイルスによって引き起こされるので、再びかかることがあります。
[ヘルパンギーナ ]
症状は発熱と咽頭の水疱です。コクサッキーウイルスやエコーウイルスの感染によります。原因ウイルスが1つでないので何度もかかることがあります。3日〜7日程度で治ります。しかし、のどがしみて、唾液を飲み込むのもつらくなることがあります。乳児は不機嫌、哺乳力低下、幼児は嚥下困難、頭痛や筋肉痛を伴います。3つの病気に共通しているのは、10歳以下の子どもが多く、幼児では哺乳力低下や嚥下困難により脱水を起こすことがあります。合併症として、熱性けいれん、また無菌性髄膜炎などの中枢神経系があります。有効なワクチンはありません。感染経路はウイルスの飛沫感染か、便に排泄されたウイルスの経口感染もあります。より確実な診断に、採血しての血清抗体価の測定がありますが、特別の場合しかやりません。
第10回 新しい予防接種
外国ではすでに行われているものですが、最近相次いで、新しいワクチンの接種が可能になりました。今回、3種類のワクチンについて説明します。任意接種のために有料ですが、一部市町村では経済的な補助を開始しています。
[ 肺炎球菌ワクチン ]
肺炎球菌は、肺炎、中耳炎、咽頭炎、時には髄膜炎を引き起こします。接種は、2カ月齢以上9歳未満が対象です。商品名は、「プレベナー」で、何種類もある肺炎球菌のうち7つの重要な肺炎球菌に対するワクチンです。以前より、わが国にあったワクチンとは異なって、このワクチンは特殊な加工がしてあるため、2歳未満の乳幼児でも十分な免疫をつけることができます。欧米の報告では重症な肺炎球菌感染症の90%以上が減少したとされています。
[ Hibワクチン ]
Hib(ヒブ)はインフルエンザ菌b型の略称。新型、季節型で騒がれたインフルエンザウイルスとは異なります。Hibは肺炎、敗血症、喉頭蓋炎などを引き起こします。細菌性髄膜炎の患者さんの半分以上がこの菌で起こります。商品名は「アクトヒブ」です。2カ月以上5歳未満が対象ですが、現在、供給量が少なく必要量に追い付いていません。
上記2つのワクチンは、3種混合ワクチン(DTP)と同日に接種が可能です。主治医の先生と相談してください。また、ワクチンの副反応は、発熱や接種部位の脹れですが、その頻度は他のワクチンと変わりません。
[ パピローマウイルスワクチン ]
子宮の入り口付近にできるがんを「子宮頸がん」といい、原因はほぼ100%がヒトパピローマウイルス(HPV)で、多くの場合、性交渉によって感染します。HPVは100種類以上のタイプがあり、約15種類が子宮頸がんの原因となります。今回の商品名「サーバリックス」は、子宮頸がんの原因として最も多いHPV16型と18型の感染を防ぐワクチンです。10歳以上の女性が対象。ただしすべての発がん性HPVの感染を防ぐことができるわけではないため、子宮頸がんにかかる可能性はあります。しかしワクチンを接種しなかった場合と比べれば可能性はかなり低くなります。
第9回 キャリーオーバー
キャリーオーバーとは、「こどものときに発病した慢性の病気」または「治癒しても病気から発生した合併症などの問題」を思春期や成人に持ち越すことをいいます。実際に、慢性疾患の50%以上が当てはまります。このような場合いかに医療にかかわっていくかは、大変重要なことです。
[ キャリーオーバーとなる主な病気 ]
先天性心疾患、胆道閉鎖症、直腸肛門奇形、先天性代謝異常、小児がん、慢性腎疾患、気管支喘息、膠原病、1型糖尿病、潰瘍性大腸炎、てんかん、筋ジストロフィーなどがあります。この観点から「成育」という言葉が生まれ、「国立小児病院」は、「国立成育医療センター」になりました。「成育」とはキャリーオーバーを考慮した医療体系で、「成育医療」は胎児期・乳幼児期から子どもと家族の将来をも見据えての、総合的、継続的なものを意味します。
[ 心理・社会的問題 ]
小児科から内科へ移行した場合の主治医との関係、進学・就職、結婚・妊娠・出産など。その対応は、医療に関係したもののみでなく、その支援は、家族関係(母子関係や同胞の関係)、学校生活(学力・体育、友人関係、教師との関係)、地域の人々との関係、職場における人間関係などを含んでいます。
[ 小児がんの場合 ]
成人に至ってからの病名説明、再発、治療に伴う合併症(晩期障害)、二次がん(新たながん)の発症に対する不安など。
[ 外科系疾患の場合 ]
直腸肛門奇形などでは、性の問題、異性とのつきあい、将来への悲観などがあります。
[ キャリーオーバーの現時点での解決すべき問題点 ]
立場によって異なるもので、次のようなものがあります。
A患者側…社会的に未熟、小児医療提供者への依存性が強く、そのため、成人医療者への不信が生まれやすい
B家族側…㈰患者に対する過保護的な対応、㈪疾患の重症度への過剰な認識、㈫医療提供者への過度の要求
C小児医療者側…自己過信、患児や家族との感情的な強過ぎる絆(きずな)、成人医療提供者への不信、移行プログラムの欠如
D成人医療者側…キャリーオーバー症例への興味の欠如、患者の気持ちへの無理解、先天性疾患への知識の欠如
などがある。
第8回 ながびく咳
第8回
ながびく咳
子どもには、咳(せき)を症状とする病気は多数あります。「ゼーゼー」をともなった咳も多くありますが、ここでは、「ゼーゼー」のないものについて述べます。発熱もなく2週間以上続く咳についてですが、多いのは副鼻腔炎と心因性の咳です。
[ 副鼻腔炎に伴う咳 ]
就寝後まもなくや、早朝、起床時に多く認められ、湿ったような咳をする。診断時に、喉の奥に、鼻から下がっている痰を認めれば可能性が高い。副鼻腔炎はX線検査などで診断がつきます。治療は、耳鼻科の先生に相談して、症状に応じた治療が必要です。
[ 心因性の咳 ]
聞いていて、喉の痛くなるような咳です。主に乾いたような、連続して出る咳のことが多い。特徴的なことは、熟睡すると咳込みが止まる。しばしば、咳喘息(実際は小児ではまれ)と言われて来院する患者さんがいますが、喘息の場合は眠っても改善しないことが特徴です。また、熱中しているときは少なくなります。検査でも異常ないと言われたときは、この病気を疑ってみましょう。
[ 百日咳 ]
2歳以下の典型的な場合は、顔色が悪くなったりし、1週間以内に診断されます。しかし、現在は、百日咳にかかる人は、平均年齢が20歳です。年長児で、発熱がなく2週間以上の場合は疑ってみる必要があります。
[ 咳喘息 ]
原因は、クーラー、家のほこり、ダニ、花粉、塵の吸入等。アレルギーの原因を特定することは困難。こまめな掃除を。診断は非常に難しく、症状から咳喘息を疑い、治療で良くなれば咳喘息と診断する場合がほとんど。症状は㈰ほかに原因となる病気がないのに、咳が3週間以上続く。㈪かぜの後に続いておこることが多い。㈫ゼーゼー、ヒューヒューや呼吸困難はない。㈬痰はでない。㈭咳は夜間から明け方に多い。㈮冷たい空気、タバコの煙、会話、運動などで咳こみやすい。㈯かぜ薬や咳止めが効かない。治療は吸入ステロイド薬、気管支拡張薬・抗アレルギー薬が有効。
最後に、頻度が多いものを述べましたが、ながびく咳には、多くの原因があることを知り、より重くなっていくような場合は確実な診断が必要となります。
第7回 患者の兄弟の気持ち
子どもの病気が長期化しているとき、患者さんばかりでなく兄弟にも影響が出ます。兄弟の悩みも分かってあげてください。今まで一緒に過ごしていた兄弟がいなくなることに加えて、いくつかの特徴的な悩みが出ることがあります。このような問題に気づいたときは、医療者に相談しても良いと思います。
[健康な兄弟にも上手に対応すること]
長期に病気を患っているお子さんがいる家族は、精神的にも肉体的にも大変なことが多いものです。両親、特に母親は病気の子にかかりきりになってしまいます。最近、病気の子に加え、健康な兄弟にも、上手に対応することの必要性が指摘されています。
病院から家に帰ると「お母さんは看病で疲れているのだから、自分のことくらいは、自分でしなさい」とか「○○ちゃんは、病院で痛い検査にも負けずがんばっているのよ。おにいちゃんもしっかりしなくちゃね」とか言ってしまうのが普通です。お母さんの帰りを待っていた子どもには、つらい言葉です。
ときに、このようなことが長く続くと、子どもは自分が健康でいることをうらんだりもします。ときに、病気の子が熱を出すと、家族中が大騒ぎをするのに、健康な子は熱を出しても「寝てなさい」と言われるくらいで、明らかな差を感じます。
[年齢が大きくなると疎外感が生まれることも]
年齢が大きくなると、家族のみんなが病気の子どもを一生懸命に援助しているのに、自分だけは何もすることができない。そういった疎外感が生まれることがあります。そのことは、ときに学校生活にまで影響します。兄弟の人数が少ない現在では、より起こりやすいといえます。
[予防法は?]
絶対的な予防法はありません。できる限り、患者とお子さんを含めて家族が面会の機会を持って、全員が現状を知る。さらに、年齢に合った説明をするのがよいといわれています。
このような疎外感を持つのは、子どもだけではありません。仕事に忙しい父親にも見られ、夫婦関係にも影響がでる場合があります。さらには母と祖父母間にも見られることがあり、治療に影響することさえあります。
第6回 熱中症
「車内にいた子どもが熱中症」「炎天下で野球をしていた高校生が熱中症」との記事を目にする季節です。熱中症の発症には、気温に加えて湿度も関係しています。そして、治療で大事なことは、熱中症と診断または疑いがあったら、必ず医療機関を受診することです。
[熱中症とは]
㈰熱痙攣(ねつけいれん)㈪熱疲労㈫熱射病に分類され、最近は重症度から㈵〜㈽度に区別されています。
㈵度(軽症)は四肢や腹筋などに痛みをともなった痙攣(全身の痙攣ではない)、腹痛。さらに失神(数秒間程度)、脈拍が速く弱い、呼吸数の増加、顔色不良、めまいなど。
㈼度(中等度)は、めまい、疲労感、頭痛、吐き気、嘔吐(おうと)などのいくつかの症状が重なり、加えて血圧の低下、頻脈、皮膚の蒼白など。
㈽度(重度)は、意識障害、おかしな言動や行動、過呼吸、中枢神経系を含めた多臓器障害。重篤で、死亡に至る危険性が高い。
[スポーツによる熱中症の予防]
㈰気温、湿度などを把握し、それに応じた運動量を守る。涼しい時間帯に行う。適切な水分補給を行う。㈪暑さに徐々にならしていく。体が暑さになれていない梅雨明け直後に多い。㈫体調の悪いときは運動を控える。㈬服装に気をつける。㈭具合が悪くなった場合には、早めに運動を中止する。
[重症になりやすい幼児の熱中症]
体温調節能力、発汗能力、腎臓(じんぞう)の働きが成人より未熟であるうえに、体内から表面への熱運搬能力も低い。また、水分摂取の有無で影響を受けやすいなどが原因です。室内で静かにしていても起こることもあります。実際、幼児が「かくれんぼ」で熱中症になり死亡したこともあります。
[治療]
1意識の状態を確認。あわせて、呼吸、脈拍、顔色、体温、手足の温度などのチェックを。
2㈰休息…安静を保てる環境へと運ぶ。衣服を緩める。㈪冷却…涼しい場所で休ませる。㈫水分補給…意識がはっきりしている場合に限り、水分補給をおこなう。意識障害や吐き気がある場合には、早急に医療機関の受診が必要となる。
第5回 給食がにがて
楽しく幼稚園、小学校生活を送れていますか? 最近、「給食が食べられない」という相談が多くなっています。単なるしつけだけでなく、本当に食べることのできないお子さんがいることが、わかってきています。その1つにアスペルガー症候群(高機能自閉症)が考えられています。
[特徴]
偏食がある。例えば、離乳食のころは何でも食べていたが、3歳ごろから毎日、トンカツ・鶏のから揚げ・白米・うどん・ラーメンしか食べない。そのため「幼稚園や小学校の給食が心配。また外食もままならず、友達や親せきの家に遊びに行けない」と悩むことが。相談しても「体格がいいので様子を見るように」と。また、見た目・調理法を変えても、味覚・触覚(舌)が過敏でわかってしまい、うまくいかないことがほとんどです。
[本人の言い分]
「食べたことがないものは怖い」、「トマトの赤い色、ピーマンの緑色が嫌い」。嗅覚、触覚にも問題があることが多いので、「においが嫌い」とも、「歯を磨きたくない」と言うことも。
[アスペルガー症候群]
㈰社会性の障害(他人とのかかわりでふさわしい行動がとれない)。暗黙のルールがわからない、太っている人に正直に「太っているね」と。同年齢の子どもと遊ぶのが苦手㈪他人とコミュニケーションをとることが苦手。話がよく飛んだり、相手が興味のないことを一方的に話したり、話が回りくどい㈫こだわりが強いなど考えと行動に柔軟性がない。人の名前や誕生日を覚えたり、歴史の年号を覚えたりが得意。また趣味としてカード、車のおもちゃやレシートなどの収集。この症候群には五感(味覚、視覚、聴覚、触覚、嗅覚)の異常が存在することがある。多くは過敏。逆に鈍感(鈍麻)のときもあり、食べ物への無関心から、「うちの子は1度もおいしいと言ったことがない」というお母さんも。
[対策]
「早く食べなさい」「全部食べなさい」が最もつらい。反面好きなお菓子を食べたり、コーヒーを飲んだりすると落ち着くことも。また、落ち着くために唇や爪をかむことが多いとも。いずれにせよ、気持ちを理解して対応することが必要です。心当たりのある場合には、受診を勧めます。
第4回 予防接種
予防接種は済んでいますか? 万一、麻疹(はしか)などになると、学校を休まざるを得ないばかりか、病気が重く合併症に苦しむこともあります。定期接種のものはもちろんですが、任意接種のものも受けることをお勧めします。まず、これまでの予防接種歴を確認しましょう。
[接種の必要性]
予防接種は、各種の感染症に対する免疫を持たない人のために、あるいはすでに持っている抵抗力をより高めるために行われるものです。「麻疹ゼロ(0)作戦」と言われるように、将来この感染が消失し、予防接種がなくなることが理想です。
[種類]
定期接種(小児の場合)はジフテリア・百日咳・破傷風(DPT三種混合ワクチン)、ポリオ、麻疹・風疹(MRワクチン)、日本脳炎(休止中)、結核(BCG)。任意接種(主なもの)は、おたふくかぜ、水痘、b型インフルエンザ菌(Hib)、インフルエンザなどです。
[成分による違い]
ワクチンには、生ワクチン(ウイルスや細菌を人体には影響ないほどに弱めたもの)、不活性化ワクチン(ウイルスや細菌の性質を失わないで、感染し発病する能力をなくしたもの)、トキソイド(細菌の出す毒素を、免疫をつける能力をそのままにして無毒化したもの)の3種類があります。
[接種間隔]
いくつかのワクチンを接種するとき、生ワクチンの後は4週間(正しくは27日)、不活性化ワクチンの後は1週間(正しくは6日)あけなくてはなりません。
[予防接種をしていない場合、不十分の場合]
生ワクチンの場合は、市町村からの補助を考慮しなければ、いつ接種しても問題ありません。不活性化ワクチンは回数が多く、正しく接種することが必要ですので、主治医の先生とよく相談してください。
[接種不適当者および接種要注意者]
「接種不適当者」とは㈰発熱のある人㈪重篤な急性疾患になっている人㈫接種する液の成分で、以前に重い副作用を起こしたことがある人など。「接種要注意者」とは㈰慢性の病気がある人㈪過去にけいれんのある人㈫免疫不全の診断がなされている人および近親者に先天性免疫不全症の人がいる場合などです。
第3回 急性咽頭炎・中耳炎
発熱を繰り返す病気
急性咽頭炎・中耳炎
乳幼児で頻度が多いのは、インフルエンザ菌(インフルエンザウイルスではありません)または肺炎球菌によるものです。これらの菌は中耳炎、副鼻腔炎(蓄膿症)、咽頭炎、肺炎、時には髄膜炎の原因となります。
[症状は?]
多くの患者さんが1カ月に一度は決まって発熱するというようになります。いったん発熱すると、1〜2日では解熱しないことがほとんどです。ただ、熱が続いていても比較的元気なこともあります。また、午前中は解熱していることが多く「今日で治ったかな」と安心していると、夕方からまた熱が出て、救急外来を受診するということになります。血液検査をすると、CPR検査(細菌感染症などで重症ほど値が大きくなるタンパク)が陽性を示し、多くで白血球数が増加しています。
[なぜなるの?]
これらの菌は子どもの鼻やのどにいますが、多くの人は無症状です。繰り返す人には菌に対する抵抗力(抗体)に異常のあることが分かってきています。ただし、病気を繰り返していた人も3歳ごろまでには抵抗力がついてきます。そのため、この病気にかかるのは多くが3歳以下です。
[治療は?]
抗生物質を使用します。経口投与(内服)による治療では、現在、最も効くといわれている抗生剤を使用してもその効果は十分ではありません。最近、これらの菌が薬に抵抗を示す(耐性菌と呼ばれる)ことも多く、より治りにくくなっています。そのため、血液検査で病気の勢いが強いと判断したときは適切な抗生剤を選択し、静脈内投与(点滴)による治療が必要となります。効果があった場合、多くは24時間以内に解熱します。
[発熱を繰り返すそのほかの病気は?]
3歳ごろからは扁桃腺炎、また腎臓などに異常があったときの尿路感染症(特に腎盂腎炎)なども多く経験します。時には、何か重い病気が潜んでいるときもあります。
第2回 インフルエンザ
インフルエンザ
この季節、急に発熱がみられ、全身がだるいような症状があったときには、インフルエンザをまず考えましょう。最も重症な合併症は脳症ですが、ひきつけや脱水症になることもしばしばあります。そのため、インフルエンザと診断された場合には、治療について主治医の先生とよく相談しましょう。
ヒトに感染し、発症するインフルエンザにはA型、B型の2種類があります。
[診断は?]
鼻の奥の咽頭に近い部分から検体を採取後、20分程度で結果がわかります。A型とB型の区別も可能です。しかし、発熱後すぐではウイルス量が少ないため陽性と判定されない場合があります。また、タミフルなどの抗ウイルス剤を内服しても24時間以内であれば陽性を示します。家族などにインフルエンザの人がいて、強くインフルエンザが疑われ治療を優先した場合でも、後日診断を確定することができます。
[治療は?]
抗インフルエンザ薬を発熱後48時間以内に用います。A型・B型両方に有効なオセルタミビル(商品名:タミフル)および吸入薬のザナミビル(商品名:リレンザ)、A型にのみ有効なアマンタジン(商品名:シンメトレル)があります。最近は、これらの薬に耐性を示す(薬が効かない)場合があります。タミフルは10歳以上の小児には、せん妄などの副作用(因果関係は不明、最近は否定的)から特別の場合を除いて処方を控えています。また、解熱後2日で、登園、登校が許可されます。
[合併症は?]
インフルエンザ脳症が最も重要です。発熱から脳症の症状が現れるまで、数時間〜1日と短いのが特徴です。また、脳症は6歳以下に多く、ひきつけとの区別がかならずしも容易でありません。インフルエンザではアセトアミノフェン以外の解熱剤の使用はやめましょう。それ以外の解熱剤を使用した人で、脳症が多く起こっています。
[予防は?]
インフルエンザワクチンを受けましょう。しかし、小児では、ワクチンは感染予防より重症化(脳症)の防止に重点が置かれた予防法です。タミフル、リレンザにも予防効果がありますが、その適応は主治医の先生に相談しましょう。
第1回 発熱
第1回
発熱
子どもの発熱では、機嫌、食欲、睡眠の状態はどうか、またゼーゼーはないかなども重要です。熱の高さは、重症度に関係ないとの意見もありますが、熱が高いほど病気の勢いが強いと思ったほうが良いでしょう。また、受診は午前中が最善だということを心に留めておきましょう。
これから風邪やインフルエンザの季節です。今回は、お子さんの熱に気づいたときの注意について述べます。
[年齢は?]
まず、お子さんの年齢を考えます。生後1カ月以下の場合は、入院が必要となることも。1カ月〜4カ月では、入院はともかく、検査が必要です。その結果、機嫌もよく検査に異常がなければ、外来での治療で経過を見ます。6カ月以上で、元気であれば、夜間の場合は次の日の診察で大丈夫と思います。
[熱は何日目?]
4日以上続く発熱の場合は、元気でも医師の診察が必要です。また、4日以内でも、前日より元気がないときも注意が必要です。
感染症(特に細菌による場合)では、午前中は平熱で元気ですが、午後の4時くらいから急に上昇することが多くみられます。そのため、心配になり、救急外来を受診することになります。前日の夜間に熱があった時は、平熱になっていても受診することを勧めます。
[治療は?]
38・5度以上でつらそうであれば解熱剤の使用を考えてよいと思います。ただ、1歳以下では使用しないことが多くなっています。副作用の恐れから、小児ではアセトアミノフェン以外の解熱剤の使用を控えています。また、頓用での使用(必要な時に飲む)が基本です。ただ、解熱剤の効果は一時的なものです。熱性けいれんを起こしたことのある人は抗けいれん剤との併用を勧めます。熱に加えて、食欲が不十分のときは輸液(点滴)してもらうと、多くは楽になります。
氷枕は熱中症以外での解熱効果は少なく、お子さんが嫌がれば使う必要はありません。「発熱時のお風呂」は食欲がないときは控えた方がよいでしょう。
発熱の原因が分かれば、その治療が最優先であることは、言うまでもありません。














