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2009年10月 アーカイブ

2009年10月09日

vol.10 “健康寿命を延ばそう”

vol.10
“健康寿命を延ばそう”

 食生活を大切にするのは「寿命」を長くするためではなく、「健康寿命」を長くするためです。この「健康寿命」という言葉は、聞き慣れない言葉かもしれませんが、10年くらい前にWHO(国連の世界保健機関)が「健康で自立した生活を送ることが出来る年数」ということで提唱し始めた考え方です。
 FAO方式で計算した2003年の健康寿命の数字を見ますと、当時の日本人の平均寿命は男性78.4歳、女性85.2歳に対し、健康寿命は男性72・3歳、女性77・7歳となっています。単に何歳まで生きるかという平均寿命と、この健康寿命の差は、男性6.1年、女性7・5年となります。すなわち、男性でいえば、平均の寿命は78.4歳でも、最後の6.1年は自立して生活を送ることができない年数ということになります。女性ではその年数は7・5年です。
 外国ではこの2つの寿命の差は、健康寿命の長い国順に男女平均オーストラリア6.3年、フランス6.2年、スエーデン6.5年、スペイン5.9年で、日本よりやや短いようにも思えます。

“寿命長きをもって尊しとせず 健康寿命長きをもって尊しとす”
 この健康寿命の概念は、日本ではまだ広く使用されるようにはなっていませんが、日本の男性の平均寿命が世界のトップクラスだといっても、最後の6.1年が自立した生活が送れない状態(場合によっては寝たきり)だというのでは悲しいではありませんか。
 平均寿命を延ばすことも大切ですが、それとともに健康寿命を延ばし、両者の差を縮めたいものです。そのためにも今日からでも自分の食生活を大切にし、脳卒中や心臓病、がん等の生活習慣病にならないよう頑張りましょう。
 話は変わりますが、毎日の食生活の中味のほかに最近心配なことがもう一つあります。朝食を食べない人の増加、特に朝食抜きのお子さんの増加です。朝ご飯を食べた学童と朝食抜きの学童では、午前中のテストで差がつく、朝食を摂った学童の方が成績がよいという結果も報告されています。
 その訳は、人間の脳の栄養になるのはブドウ糖だけで、それは食事で補給されますが、昼間の食事で補給されたブドウ糖は夜のうちに消費されてしまい、朝食を摂ることで新たに脳に補給されるのだそうです。従って朝食を抜くと脳の中は栄養不足で脳が十分働かない。そのため午前中のテストでは、朝食を食べたか否かで差がついてしまうのだそうです。サラリーマンでも同様でしょう。
 大人の朝食抜きは2〜3割ですが、学童でも1割前後あるそうです。お母さんが多忙の故だと思いますが、何とか工夫してお子さんのために頑張って朝の欠食を無くしたいものです。

2009年10月16日

第7回 患者の兄弟の気持ち

 子どもの病気が長期化しているとき、患者さんばかりでなく兄弟にも影響が出ます。兄弟の悩みも分かってあげてください。今まで一緒に過ごしていた兄弟がいなくなることに加えて、いくつかの特徴的な悩みが出ることがあります。このような問題に気づいたときは、医療者に相談しても良いと思います。

[健康な兄弟にも上手に対応すること]
 長期に病気を患っているお子さんがいる家族は、精神的にも肉体的にも大変なことが多いものです。両親、特に母親は病気の子にかかりきりになってしまいます。最近、病気の子に加え、健康な兄弟にも、上手に対応することの必要性が指摘されています。
 病院から家に帰ると「お母さんは看病で疲れているのだから、自分のことくらいは、自分でしなさい」とか「○○ちゃんは、病院で痛い検査にも負けずがんばっているのよ。おにいちゃんもしっかりしなくちゃね」とか言ってしまうのが普通です。お母さんの帰りを待っていた子どもには、つらい言葉です。 
 ときに、このようなことが長く続くと、子どもは自分が健康でいることをうらんだりもします。ときに、病気の子が熱を出すと、家族中が大騒ぎをするのに、健康な子は熱を出しても「寝てなさい」と言われるくらいで、明らかな差を感じます。

[年齢が大きくなると疎外感が生まれることも]
 年齢が大きくなると、家族のみんなが病気の子どもを一生懸命に援助しているのに、自分だけは何もすることができない。そういった疎外感が生まれることがあります。そのことは、ときに学校生活にまで影響します。兄弟の人数が少ない現在では、より起こりやすいといえます。

[予防法は?]
 絶対的な予防法はありません。できる限り、患者とお子さんを含めて家族が面会の機会を持って、全員が現状を知る。さらに、年齢に合った説明をするのがよいといわれています。
 このような疎外感を持つのは、子どもだけではありません。仕事に忙しい父親にも見られ、夫婦関係にも影響がでる場合があります。さらには母と祖父母間にも見られることがあり、治療に影響することさえあります。

vol.11 “入院適齢期”を延ばそう

vol.11
“入院適齢期”を延ばそう

 「入院適齢期」、聞き慣れない言葉ですね。そのはずです。私が勝手に作った言葉ですから。
 私が心臓のバイパス手術で、入院した時のことです。病気、まして手術で入院したのは初めて、最初はじっとしていました。術後の回復を早めるためか、術後3日目から院内をできるだけ歩くようにと言われ、まだ痛みの残る胸を手で押さえながら廊下をよく歩きました。
 私の病室のあったフロアには10個の個室がありました。1号室が私、廊下を歩きながら見るとはなしに各病室の名札を見ていましたら、3号室はS氏、私の宇都宮中央小学校以来の親しい友人が入院していました。相互訪問で久しぶりに話し合ったりしました。彼はその後すっかり元気になり、私と定期的に一杯酌み交わしています。
 7号室はT氏、非常に珍しい名前なので、私が戦時中入校していた陸軍幼年学校の同期生に間違いないと思いましたが、看護婦さんにT氏の身元を聞くわけにもゆかず「7号室の患者さんは76歳か」と聞いたら「なぜあなたはT氏の年齢を知っているのか」と言われ、間違いなく同期のT君と判りました。彼は重い症状のようで、その時は面会できませんでした。

“入院適齢期”って?
 10部屋の入院患者のうち、私を含め3人が同級生で同じ年齢、とすると残りの7人の入院患者の中には、ほかにも私たちと同じ年齢の人がいるはずと思い、病院の医師に「この病院の入院患者で一番多いのは何歳の人か」と聞きましたら、76歳の人だとのことでした。私と同じ年齢、世代の人の入院患者が一番多い。言い換えれば、私の世代の入院適齢期は、76歳ということになります。
 話はそれだけなのですが、ふと考えました。私たち昭和3年組の世代は、今95万人います。ところが他の世代、例えば昭和22年生まれの人は213万人、23年生まれは225万人、24年生まれは227万人など、いわゆる団塊世代の人たちは、それぞれ私たちの世代の2倍です。
 今は76歳、あるいはその前後の人たちが大勢入院しているためもあって、病院は満員ですが、これから十数年後、団塊の人たちが入院適齢期(76歳)になった時の要入院患者は、単純計算でも今の倍くらいになる勘定です。入院することが必要になっても、病院はどこも満員で入院できないかもしれません。とすれば、団塊の人たちは自衛上自分たちの入院適齢期を、80歳あるいは85歳に延ばす必要があります。
 そのためには今からでも遅くはない。食生活に気をつけましょう。勉強、努力して入院適齢期を延ばしましょう。このことは前回の「健康寿命」を延ばすことにもつながるのではないでしょうか。

2009年10月23日

vol.12 “日本の食料自給率”は大丈夫か?

vol.12
“日本の食料自給率”は大丈夫か?

 私の「食育ばなし」も、今回で最終話となります。食育の話をするとき、最後にはどうしても食料の自給率の問題にふれたくなります。私の小学5年ごろに米が自由に買えなくなり、米の配給が始まりました。自由になったのは昭和44年ごろだったと思います。今からわずか40年前の話です。
 今は飽食の時代、お金を出せば何でも食べられます。しかし、こんな時代がいつまで続くのだろうかと、配給制度でお腹が空いて困った時代を経験している私たちはつい考えてしまいます。皆さんは、日本の食料自給率の低さなどにはあまり関心が無いかもしれませんが、ちょっと我慢して読んでください。
 これからの世界の食料事情は大変心配です。その理由の一つは世界の人口増加です。現在62億人以上といわれる世界の人口は、先進国で人口減が話題になっていますが、発展途上国では人口の増加が続き、20数年後には世界の人口は80億人になります。今でも食料不足で飢えに苦しんでいる人が数億人います。人口が増えれば食料の需要は当然今より増えます。その上、現在世界の人口の40%、二十数億人を占める中国とインドが、急速に経済発展を続けています。日本がそうであったように、経済が発展すると、その国の食料消費量は増加します。加えて経済発展とともに食生活が豊かになり、畜産物の消費が増え、その畜産物を作るために飼料としての穀物の需要が急増します。これらのことも食料需給をタイトにします。
 さらに昨今では、石油不足対策としてバイオエタノールを作ろうということで、穀物を液体燃料にする動きも活発になってきました。人間が食べていた穀物が、食肉を作るための飼料や、自動車の燃料製造にも使われるようになってきました。
 一方、穀物を作る耕地は無限ではありません。むしろ世界の耕地面積は減少傾向にさえあります。私が昭和28年に農林省に入った時の日本の耕地面積は600万ha以上ありましたが、今はそれが450万haぐらいに減ってしまいました。この傾向は今も続いています。
 そういう中で日本の食料の自給率は、現在先進国中最低、しかも極端に低い40%にまで下がってしまいました。今から40年くらい前まではなんとか60%〜70%くらいあったのですが。
 日本人が日本国内でできる物を食べなくなると、日本の農業は当然に衰微します。昭和52年ころと記憶していますが、NHKのテレビドラマで、「食料輸入ゼロの日」というのがありました。主演男優は、私ならぬ、俳優の「渡辺文雄」氏でした。彼は大学の1年後輩で、彼も日本の食料問題を心配してましたが、数年前他界されました。
 以上、長い間読んで頂き、ありがとうございました。

いい子好みの母親では

井上初代のちょっとからくちTALK
いい子好みの母親では

 研究会の保育参観でのことです。5〜6人の子どもがグループを作ってごっご遊びをしていました。その中、遊びのイメージをめぐって仲間うちで意見が分かれ言い争いをはじめました。互いにゆずれない様子で自分を主張するのでけんか腰の対立になりました。するとほかの遊びをしていたS子が仲に割って入り、大人びた口調で“意見を聞いてからにしよう”とか“話し合ってみよう”などとオシャマぶりを発揮してなだめています。その仲裁に激した二人もけんかをすぐ中止してS子の意見通りに行動し始めたのです。私はこのなり行きに、子ども界がこれでよいのかと考えこんでしまいました。
 発達からみると3歳ごろから自我が芽ばえ育ちますから、自我のぶつかり合いでけんかが多くなるのは当然で、以前の子どもだったら、この場面では大声で言い争い、まわりの子どもにありったけの知恵を言葉にして自分の意見の正しさを互いに主張し合い、言葉に困るとなぐり合うなど先生の助けが必要でした。故に、S子の大人びた仲裁ぶりやけんか仲間のききわけのよさに疑問を感じたのです。この時期の「いい子」とは、エネルギーに満ちいたずらともみられる好奇心がいっぱいあって、反抗したり、暴れたり、よごれをいとわず熱中して遊びながら自分を試したり鍛えたりしている子だと考えられています。

母親にとっての“いい子”とは
 一方、母親のいい子とは、しつけがゆき届いていて、母親のつくったルールに従って規制通りに行動できる、育てるのに苦労や葛藤が少なく母親にとって都合の「いい子」と、思い違えていないでしょうか。発達からいうと、大人の都合である時期が欠落したり、省略されたり、未熟なまま過ぎたりして早くから大人風に育てるのは不自然で不健康だと思うのです。私もそうですが一般に女性は細かくて干渉がましいところがあります。つい規制をつくってその型に従わせようとします。子どもは母親の顔色をみて母親に気に入られる手を身につけて、S子のようにマセたつき合い上手に育っていきます。男の子も、母親の歩調に合わせるように育っていきます。
 M子は母親の方針通りに育ち、一流大学から超一流の企業のしかも研究所に就職し、前途洋々にみえました。しかしそこでの研究の独自のアイデアや独創性の要求にM子は自分を見失い、休職中とのことです。品川孝子氏のことばに「母親はいい子に育てようと規制づくめにし、子は規制が多いと何も考えなくてよく、ルールに従うのにエネルギーを使い果たす」とあります。これはM子にもいえると考えられ、参考になる言葉です。

2009年10月30日

vol.13 “日本の食料自給率”は大丈夫か?

vol.13
“日本の食料自給率”は大丈夫か?
(フードマイレージ)
 追補㈵

 コラム延長のリクエストがありましたので、わが国の食料自給率の低さについて、別の視点から2つお話を追加したいと思います。日本の食料自給率の極端な低さ、逆に言えば大量の食料を世界各地で買い集め輸入している現在の姿を、環境上問題ありとして指摘する動きがあります。その1つが、「フードマイレージ論」(?)です。
 フード(食料)マイル(距離の単位)という言葉は、今から15年くらい前に英国の理論家が提唱した運動に由来しています。具体的には、まず食料が生産されたところから消費されるところまで輸送されてくる距離に着目します。そして、その輸送のための燃料として消費されるエネルギーをできるだけ減らして、環境に与える負荷を軽くするために、なるべく近くでとれた食料を食べるべきだという考え方です。
 確かに、日本は今世界中から年間何千万トンもの穀物、食料を輸入していますが、それを運ぶために船が重油をたいて走ってくる間に放出されるCO2等の量は膨大なものがあると思います。なるべく近くでとれた食料を食べることによって、輸送にともなうエネルギー消費をできるだけ減らし、環境への負荷を軽減しようということは大切な視点だと思います。

“やっぱり地産地消が基本だ”
 日本では、農林水産政策研究所が、「日本の国別食料輸入量」にそれぞれの「輸出国から日本までの輸送距離」を乗じた数値を「フードマイレージ」として計算しています。その一部を紹介しますと、大豆や小麦などほとんどが外国生まれである“天ぷらうどん”の材料が、輸入先国から日本に運ばれてくるまでの距離と日数は、例えばうどんの材料の小麦はカナダのバンクーバから日本へ7900kmを14日かけて、同じくオーストラリアのフリーマントルからは8300kmを14日かけて、天ぷら油の原料となる大豆はアメリカのニューオリンズから1万7000kmを30日かけて、同じくブラジルのサントスからは1万9000kmを37日かけて、エビはインドネシアのスラバヤから5900kmを14日かけて、同じくタイのバンコクからは4500kmを14日かけて日本に運ばれてきます。
 この輸入相手国別の日本の食料輸入量×輸出国から日本までの輸送距離=フードマイレージt・km(トンキロメートル)は、発表されている平成12年の計算例では5002億t・kmになるのだそうです。韓国は1487億t・km、米国は1358億t・kmだそうです。日本のフードマイレージの大きさが目立ちます。
 言うまでもなくこの考え方は、なるべくその土地でできたものをその土地で食べようという、地産地消を推進していく大きな理由の一つだと言えると思います。

子宮頚がんの予防ワクチンが日本でも接種可能に

ウイルス感染が主因とされる子宮頚がんに朗報
子宮頚がんの予防ワクチンが日本でも接種可能に

 現在、ウイルス感染が主因と認められている悪性腫瘍は、ある種の白血病と子宮頚がん(CC)の2つです。そして年末には、CCに対する予防ワクチンが、日本でも接種可能となる見込みとなりました。
 CCを引き起こすと考えられるウイルスは“いぼ”の原因として有名なパピローマウイルス(PV)と呼ばれるもので、その中の15種類に発がん性があり、特に16型・18型は約7割のCCとかかわっているそうです。
 今回のワクチンはこの2型に対して効果がありますので、CC予防の福音となり得るでしょう。
■ワクチン接種と検診で予防を
 さて、CC関連PVの感染経路は性交渉なのですが、PVは人間界に広く分布しているため、性交渉が開始されれば、誰しも感染する可能性があります。ただし、感染者の9割は自然治癒し、残り1割の1%程度ががんまで進むと見られます。
 感染から発がんまでの期間はおおよそ3年〜5年。すると、「性交渉開始前にPVワクチンを受ければ、感染さらにはCCを予防できるだろう」との結論に至るのは当然です。日本における性交渉経験率は高校生になると急に高くなるので、中学生時の初回ワクチン接種が理想的と言えるかも知れません。
 また、再感染を防ぐ目的で既経験者にも効果が期待できます。一定の間隔を置いた3回のワクチン接種により10年以上の有効性が確認されているようで、料金は約5万円と見積もられています。
 ところで、ワクチンを受けていればCCに関する定期検診は必要ない?と考える向きも出るかも知れません。けれども、現ワクチンでは効果の及ばない発がんPVもあること、CC以外の子宮疾患と卵巣疾患の存在があることを思うと、検診は従来どおり1年ごとに行うべきです。
 CC検診率は欧米が7割〜8割なのに、日本は2割強に過ぎません。その低さに婦人科医は悩んできました。PVワクチンの普及と共に、婦人科検診への関心が高まることを、婦人科医は願っています。

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