こどもの子育て、大丈夫?
今週号からスタートする「ちょっと からくち TALK」。井上初代さん、桃井真里子さん、上野通子さんの3人に、子育てや女性の生き方などについて語っていただきます。今回だけは3人そろってのトークです。司会は本紙編集本部長の渡辺慶子です。
渡辺 最近の子育てを見ていて、“これはどうかな…”と思うことはありませんか?
桃井 最近病棟で気になるのは、“人任せ”な行動ですね。看護師がいたら100%看護師任せ。親は子どもの安全に目配りするより、離れて見ている傍観者になっています。一方で、感情面では“過保護”。救急医療の場で重症患者が近くにいても、私の子を一番にみてくださいと言う。行動面では人任せだけれど、感情面では過保護。非常に両極端な家庭が増えたと感じます。
渡辺 上野さんはイギリスで生活された経験がありますが、海外と比べていかがでしょう?
上野 日本人は「ありがとう」と「ごめんなさい」が言えないんですね。高校生までそうです。何でも自分が一番というイメージがあるので、やってもらって当たり前だから「ありがとう」と言わない。人に何かして自分が悪くても「ごめんなさい」を言わないで言い訳をする。「だって何々なの」「だってこれだからしかたがないでしょ」って。親の哲学が不十分でそだっちゃったのかな。親も「人の子はいいんです。うちの子さえよければ」っていう話し方をすることが多いですね。別に比較するということではなく、学校では集団生活を学ぶことが一番大事なことで、集団の中での一員ということを親も自覚して学校へ行かせた方がいいと思うんです」。
渡辺 家庭ではどうですか?
上野 家族も親子も、みな兄弟のようになってしまった。いい面でもあるけれど、誰もきちんとしたことは言えませんね。
渡辺 井上さんは幼児教育の場が長いですが、最近のお母さんはどうですか?
井上 とにかく今の親は子どもと一心同体過ぎますね。例えば、子どもがどこかに頭をぶつけるとします。それを見ていた親も同じように頭を抱えて「痛い!」って。こんな所にこれがあるのがいけないって言うんです。ブランコを替わってもらえず泣いているわが子を見て、親が同じように涙を浮かべて先生に訴えてくる。子どもへのそうゆう温かい感情も必要ですが、大人になりきれないお母さんや「とにかく自分の子」って抱えてしまっているお母さんたちは、もう少し成長しなくてはね。欲しいと言われればすぐ買ってしまう親も、本当は、誕生日までワクワクして待つ喜びやあれこれ検討する時間を子どもから奪っているんです。
上野 イギリスでは新しい物を買う子はほとんどいませんね。例えば制服の場合、学校でお古を買ってリサイクルして着ます。小学校からそうですから、みんな物を大事にします。タイツは穴が6コぐらいあくまで、自分で繕ってはくとかね。
井上 今のお母さんは、子どもを附属品のように考えて、ひとりの人間として見ないですからね。お洋服もそうです。幼稚園で子どもを滑り台で遊ばせようとしたら、「この服はね、汚しちゃだめなの」って言うんですよ。幼稚園に来るのに、汚しちゃだめな服を着せるなんて。子どもがかわいそう。
上野 ある幼稚園の先生も「雨が降ったら、子どもを外に出さない」と言っていました。服を汚すと親が怒るからって。濡れて風邪ひいたらどうするとかね。
渡辺 教育を悪くしているのは、親ということでしょうか。
桃井 昔より今の子育ての方が難しいんだと思います。昔は親が一生懸命働いて、子どもに何か買ってあげるのが親の愛情の示し方だった。でも今は、多くの方が何でもその場限りで買えてしまう。イギリスのように成熟した社会がずっと続いているところと違い、日本はこの60年間で急激に変化しましたから。買い与える愛情から、我慢させる愛情へのシフトが追いついていないんでしょうね。急速に豊かになって、権利を主張することは上手になったけれど、責任の自覚が追いついていない。成熟した社会になるには責任意識が必要ですが、そこが抜けている。今は成熟した社会へ向かう一過程なのだと思います。
上野 子どもに何が大切かを親もしっかり考えて、責任ある子育てをして欲しいですね。
渡辺 お母さんたちが子育てに自信を無くしている面もあるかもしれませんね。次回からは、それぞれお一人ずつのコラムで、ちょっとからくちな考えを伺っていきます。どうぞよろしくおねがいします。
桃井真里子さん…自治医科大学小児科学教授。自治医科大学とちぎ子ども医療センターセンター長
上野通子さん…16年間国語科教師後、3年間渡英し現地で日本語教師を務める。帰国後は宇都宮文星女子高等学校国際交流センター長。現在は栃木県県議会議員として活躍中
井上初代さん…元宇都宮大学附属幼稚園副園長、元足利短期大学教授、元栃木県幼児教育センター顧問。幼児教育のベテラン先生です
